全身性エリテマトーデス(SLE)に対する生物学的製剤リツキシマブ(リッキサン)について

リツキシマブは現在、日本ではB細胞リンパ腫にのみ保険適応されています。米国では、関節リウマチに対しTNF阻害pが無効である患者さんへの第二選択としてリツキシマブが承認されています。

この薬剤は、炎症に深く関与するリンパ球B細胞の抗原に対する抗体です。つまり、B細胞の活性化を防ぎ、炎症の進行を止めようとするものです。理論上は、リンパ球B細胞の働きが落ちますと、細胞を攻撃するリンパ球T細胞の働きも弱まるために、全体の免疫系が抑制されます。

海外では、代表的な膠原病である血管炎症候群、SLE、皮膚筋炎、シェーグレン症候群に対する臨床試験が進行中です。

日本では、ステロイドおよび免疫抑制剤が無効のSLE患者さん19例を対象にリツキシマブが臨床試験されました。その結果、14例でSLE疾患活動性指標が0になり、寛解状態になりました。この結果からさらに14例でSLE患者さんの臨床試験(臨床第T/U相)が実施されましたが、4例では全く効果がなかったと報告されました。

また、米国でループス腎炎を対象に、リツキサンと免疫抑制薬の併用効果をみた第III相試験「LUNAL試験」も、効果不十分で失敗に終わっています。さらに、ヒト化抗CD20抗体「オクレリズマブ」、ヒト型CD20抗体「オファツズマブ」についても、難治性SLEを対象とした臨床試験が中止に追い込まれました。

副作用として血栓症があり、注意が必要です。SLE以外の膠原病に対する効果・副作用についても、さらなるデータの蓄積が望まれます。


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