全身性エリテマトーデス(SLE)悩み相談室
全身性エリテマトーデス(SLE)でお悩みの多くの方から当研究所に寄せられたご相談内容の一部を掲載いたします(個人情報は抹消しております)。ご自分の今後の治療にご活用頂けたら幸いです。
Q15.SLEでプレドニン治療中の43歳女性です。ループス腎炎の経過が思わしくないため、主治医が免疫抑制剤を新たに追加したいという説明を受けました。免疫抑制剤は命に関わる副作用があると聞いています。どのような副作用があるのか具体的に教えてください。
A.SLEで使用される主な免疫抑制剤の副作用を以下に列挙いたします。ご参考にされ、主治医と十分話し合われてください。
サイクロフォスファマイド(商品名:エンドキサン)
Nitrogen mustard(化学兵器)系で、生体内で活性されて膠原病で慢性炎症の主役となる白血球やガン細胞の核酸代謝を阻害する。
副作用:
- 出血性膀胱炎
- 骨髄抑制
- 感染症
- ガンの発生
サイクロスポリンA(商品名:ネオーラル、サンディミュン)
シクロスポリンAは真菌の代謝産物で11個のアミノ酸からなるポリペプチド。
細胞内でスクロフィリンと複合体を形成してカルシニューリンに結合し、その活性化を阻害して転写因子NFATの脱リン酸化による核内移行を阻害。その結果、膠原病の病態悪化に関与するIL-2,IL-5,INF-γなどのサイトカインの転写制御で免疫抑制効果を発揮する。つまり、Tリンパ球(ヘルパー)の機能を障害することによって膠原病で発生している慢性炎症を抑制します。
副作用:
- 腎臓障害:急性尿毒症、高尿酸血症(痛風)、高カリウム血症、低リン酸血症など
- 高血圧:治療開始の最初の数週間で起こります。腎臓の血管収縮、塩分貯留が原因です。
- 神経障害:頭痛、視力障害、けいれん、振戦、無動性無言
- 耐糖能異常
- 感染症:長期使用で約40%に発症
- ガンの発生:皮膚扁平上皮がん、リンパ腫など
- 歯肉増殖、多毛症
- 消化器症状:下痢、嘔気・嘔吐、食欲不振
タクロリムス(商品名:プログラフ)
サイクロスポリンと同じく土壌中の真菌の代謝産物で作用・副作用もほぼ同じ。
副作用:
- 腎臓障害:急性尿毒症、高尿酸血症(痛風)、高カリウム血症、低リン酸血症など
- 高血圧:治療開始の最初の数週間で起こります。腎臓の血管収縮、塩分貯留が原因です。
- 神経障害:頭痛、視力障害、けいれん、振戦、無動性無言
- 耐糖能異常
- 感染症:長期使用で約40%に発症
- ガンの発生:皮膚扁平上皮がん、リンパ腫など
- 消化器症状:下痢、嘔気・嘔吐、食欲不振
・神経障害、下痢、耐糖能異常がサイクロスポリンより高く出ます。
アザチオプリン(商品名:イムラン)
核酸(プリン体)のアナローグで、全身の細胞(特に分裂速度の速い血液細胞など)の核酸の合成を阻害する。
副作用:
- 消化器症状:容量依存性の下痢
- 白血球減少
- 肝臓障害
マイコフォノール酸モフェチム(商品名:セルセプト)
核酸の新生(de novo)合成を阻害する。
副作用:
- 骨髄抑制
次のページへ