<インフルエンザ医学最新ニュース40>
2009年に猛威を振るったパンデミックインフルエンザ(H1N1)2009に対するワクチンとギラン・バレー症候群(GBS)の関連について検討した結果、両者には小さいが有意な関連が認められたことが論文報告されました(JAMA(2012; 308: 175-181)。
米国では1976〜77年、不活化インフルエンザ(A/H1N1)ワクチンの投与後にGBS発症率が通常より上昇しました。米国医学研究所(IOM)は2003年、この76年のインフルエンザワクチンと成人GBSの間に因果関係があることがエビデンスから支持されると結論付けています。
その後の季節性インフルエンザワクチンでは、GBSリスクの上昇は認められないか、認められても小さなものという見解を示しています。
今回、パンデミックインフルエンザワクチン投与後のGBS発症を調べました。カナダのケベック州では2009年秋に同ワクチンの大規模な接種キャンペーンが実施され、同年末までに440万人に接種されました。
キャンペーン期間中に医師によって報告されるか、同州の病院の退院患者データベースで特定されたGBSの疑い例と確診例を、2009年10月から2010年3月まで追跡。また、これらの症例についてワクチン接種の有無を確認しています。
追跡期間中、GBSの確診例は83例でした。そのうち25例が発症前8週間以内にワクチン接種を受け、その大半(19例)が発症前4週間以内に接種を受けていました。データ解析からパンデミックインフルエンザワクチンによる小さいが有意なGBSリスクの上昇が認められました。ワクチン接種に起因するGBSは、接種100万回につき約2例と推定された。ワクチン接種によるGBS過剰リスクは50歳以上にのみ認められたということです。
ワクチン論文はほとんどがワクチン接種の便益はリスクを上回ると結論するもので、この論文も例外ではありません。