<インフルエンザ医学最新ニュース34>
新型インフルエンザ(A/H1N1/2009)ウイルスのワクチン接種者にナルコレプシーが発症するとの報告が発表され、ワクチン接種に懸念が出ていました。
ナルコレプシーの新規発症はH1N1型インフルエンザなどの季節性の上気道感染症の流行パターンと関連しているようですが、ワクチン接種とナルコレプシーとの間に相関は見られなかったという論文が掲載されています(Annals of Neurology(2011; 70: 410-417)。
世界に約300万人の患者がいるナルコレプシーは日中の眠気,夜間の不規則な睡眠,カタプレキシー(突然の脱力発作)を特徴とする神経疾患です。ナルコレプシーは自己免疫疾患であり,蛋白質のヒポクレチンを産生するニューロンを患者の免疫系が破壊することで引き起こされるという長年の仮説がすでに立証されています。
昨年,欧州の数カ国から,2009年に流行したA/H1N1/2009ウイルスを適応とするワクチンPandemrix(米国と中国では使用されず)を接種した小児においてナルコレプシーの新規症例が報告され,世界保健機関(WHO)のレビューにより,フィンランドでは,同ワクチンを接種した小児のナルコレプシーリスクは9倍高いことが判明しました。同ワクチンには,強い免疫応答を誘導するために2種類のアジュバントが添加されていますが,これらの添加物は米国と中国で用いられているワクチンには含まれていないようです。
今回の研究では,1998年9月〜2011年2月に北京で新規にナルコレプシーと診断された629例のデータを調べ,患者がカタプレキシーと眠気を発症した暦年と月を特定しました。また,2009年10月以降にナルコレプシーを発症した患者154例を対象に簡単な電話インタビューを行った。季節性インフルエンザ感染歴,ワクチン接種歴,他の疾患の既往歴についても質問しています。
その結果,ナルコレプシーの発症は季節性で,発症率は月によって大きく異なることが判明したようです。発症率が最も低かったのは11月で,最も高かったのは4月でした。かぜやインフルエンザの季節性ピークからナルコレプシー発症ピークまでは5〜7カ月の遅延が見られました。また,2009〜10年冬季のA/H1N1/2009のパンデミック後は他の年に比べて発症率が3倍高いことも判明しました。
この結果からは、冬季のA型インフルエンザ(H1N1型を含む)や化膿性連鎖球菌などの気道感染症がナルコレプシーを誘発することを強く示唆しています。
今回の研究知見と欧州での観察結果との違いについては「Pandemrixによって誘発された強い免疫応答が,ナルコレプシーのリスクを高めている可能性がある」としながらも,「さらなる研究が必要で,ワクチン接種を避けるべきではない」とあらためて強調しています。
インフルエンザは健康人にとっては死の病気ではありません。そこまでしてワクチン接種にこだわるのは何故でしょうか?