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2009年イギリスのA/H1N1型インフルエンザ流行は軽度のパンデミック

2009年のイギリスにおけるA/H1N1型インフルエンザの流行は軽度のパンデミックであり、従来のサーベイランスシステムではパンデミックの程度を正確に推定するには不十分なことが、論文報告されました(BMJ. 2011 Sep 8;343:d5408. doi: 10.1136/bmj.d5408.)。パンデミックに程度があること自体、パンデミックの定義がおかしいということを物語っています。苦し紛れの論文です。

2009年のA/H1N1型インフルエンザの流行が当初どの程度と推定されたかは不明であり、後に比較的軽度だが感染の年齢分布が季節性のインフルエンザとは異なることが示唆されていただけに留まっています。

今回の研究では、2009年のA/H1N1型インフルエンザのパンデミックの影響を評価するために、2010年2月下旬までの2回の流行期における重症化の確率や感染率を推定しました。

パンデミックの程度の推定には、2009年6月〜2010年2月までにイギリスで実施されたサーベイランスのデータを用い、ベイズ法によるエビデンスの統合解析(Bayesian evidence synthesis)を行っています。

A/H1N1型インフルエンザの夏の流行期には、推定60万6,100人(95%信頼区間:41万9,300〜88万6,300)の症候性の患者のうち3,200人(同:2,300〜4,700、0.54%[同:0.33〜0.82])が入院し、310人(同:200〜480、0.05%[同:0.03〜0.08])が集中治療室(ICU)に収容され、90人(同:80〜110、0.015%[同:0.010〜0.022])が死亡しまた。

2回目の流行期には、推定135万2,000人(95%信頼区間:82万9,900〜280万6,000)の症候性の患者のうち7,500人(同:5,900〜9,700、0.55%[同:0.28〜0.89])が入院し、1,340人(同:1,030〜1,790、0.10%[同:0.05〜0.16])がICUに収容され、240人(同:310〜380、0.025%[同:0.013〜0.040])が死亡しました。

感染者の3分の1以上(35%[95%信頼区間:26〜45])が症候性であったと推定されています。夏の流行期には入院患者の30%(95%信頼区間:20〜43)がサーベイランスシステムによって検出されたのに対し、2回目の流行期では20%(同:15〜25)にとどまっています。

2回の流行期を通じて、イギリス国民の11.2%(95%信頼区間:7.4〜18.9)がA/H1N1型インフルエンザに感染したと推定され、5〜14歳の推定感染率は29.5%(同:16.9〜64.1)に上昇していた。感度分析による感染率は5.9(同:4.2〜8.7)〜28.4(同:26.0〜30.8)%と推算され、2回目の流行期の感染死亡率は0.0027(同:0.0024〜0.0031)〜0.017(同:0.011〜0.024)%と推算されました。

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