<インフルエンザ医学最新ニュース38>
新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチン接種によるギラン・バレー症候群発症リスクは、小さいながら有意にあることが論文報告されました(JAMA. 2012 Jul 11;308(2):175-81.)。
研究グループは、2009年10月〜10年3月の6ヵ月間、カナダのケベック州で住民ベースのコホート試験を行いました。ケベック州では2009年秋に新型インフルエンザのパンデミックを受けてワクチン接種キャンペーンを展開しました。その際多くの人がAS03アジュバントワクチン(Arepanrix)の接種を受け、年度末までに住民780万人のうち57%が同ワクチン接種を受けています。
試験期間中にギラン・バレー症候群が疑われた、または診断された患者について、地域の医師からの報告と病院の退院報告書で確認しました。インフルエンザワクチン接種については、地域の予防接種登録名簿などで確認し、ギラン・バレー症候群発症との関連を、ポアソンモデルと自己対照ケースシリーズ法で分析しました。
その結果、6ヵ月の試験期間中、ギラン・バレー症候群が83人に認められ、そのうち71人はブライトン分類評価で1〜3でした。そのうち、発症前8週間以内に新型インフルエンザワクチンの接種を受けていたのは25人、そのうち19人が同4週間以内に接種を受けていました。
ポアソンモデル解析の結果、接種群のギラン・バレー症候群の確定診断に関する非接種群に対する年齢・性別補正後相対リスクは、接種後8週間は1.80(95%信頼区間:1.12〜2.87)、同4週間は2.75(同:1.63〜4.62)でした。
自己対照ケースシリーズ法では、接種群のギラン・バレー症候群の確定診断(42人)に関する非接種群に対する年齢・性別補正後相対リスクは、接種後4週間は3.02(同:1.64〜5.56)でした。ブライトン分類評価1〜3(36人)についてみた場合のリスクは2.33(同:1.19〜4.57)でした。
ワクチン接種のギラン・バレー症候群発症への寄与リスクは、100万人当たり2人でした。