<インフルエンザ医学最新ニュース21>

新型インフルエンザワクチン、今シーズンは死亡例一桁減

厚労省医薬品等安全対策部会は、新型インフルエンザワクチンの副反応についても集計結果を報告しました。それによると、今年1月31日現在の医療機関からの報告では副反応報告数661例、うち重篤報告数123例、うち死亡報告数16例となり、昨シーズンと比べ報告頻度および死亡報告数が一桁少ない結果となりました。

担当者は「ただ、死亡症例の内訳を見ると、80歳以上の高齢者で基礎疾患を有する人が大半であり、この点は昨シーズンと変わらない結果となった」と説明しています。

入院患児の4分の1超が集中治療へ

パンデミック(H1N1)2009の小児への影響

2009年に世界的な大流行をもたらした新型インフルエンザ〔パンデミック(H1N1)2009〕は特に若年層を中心に広がったようですが、カリフォルニア州衛生局(カリフォルニア州リッチモンド)のJanice K. Louie博士らは「同州でパンデミック(H1N1)2009のため入院した小児の4分の1超が、集中治療が必要だったか、死に至った」とArchives of Pediatrics & Adolescent Medicine(2010; 164: 1023-1031)に発表。また同号(1015-1022)でエディス・ウォルフソン医療センター(イスラエル・ホロン)のMichal Stein博士らも、イスラエルにおける小児の同インフルエンザウイルスの感染状況を報告し、「重度の合併症リスクは基礎疾患を有する小児と早産児で高い」と述べている。

パンデミック(H1N1)2009の特徴として「2009年4月にカリフォルニア州で最初の患者が確認された後、ウイルスは世界中に広がった。米国では感染例の大半が小児または若年成人で、10〜18歳の小児が40%を占め、5〜14歳における感染率(10万人当たり147例)は、60歳以上の高齢者(同10.5例)より高かった」と説明している。

今回、小児におけるパンデミック(H1N1)2009の臨床的および疫学的特徴を把握するため、同州で2009年4月23日〜8月11日に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査で同ウイルスが確認され、入院または死亡に至った小児345例(18歳未満、中央値6歳)の医療記録を解析した。

その結果、110日間の入院率は10万人当たり3.5件で、6カ月齢未満の乳児で最も高かった(同13.9件)。入院または死亡した345例のほぼ3分の2(230例、67%)で併発疾患が認められた。また、胸部X線またはCTの所見が得られた278例の半数超(163例、59%)が肺炎を発症していた。

345例中94例(27%)で集中治療が必要となり、9例(3%)が死亡した。小児の3分の2強(319例中221例、69%)が抗ウイルス療法を受け、症状発生後48時間以内に投与を受けた患者は202例中88例(44%)であった。

症状の多くは、発熱、咳嗽、息切れ・呼吸困難、悪心・嘔吐、下痢、筋痛であった。中枢神経系症状は345例中30例(8.7%)に見られ、17例で痙攣、18例で精神状態の変化、12例でこれらの併発が認められた。

死亡するか集中治療を受けるリスクは、先天性心疾患の患児や脳性麻痺あるいは脳の発達遅延の患児で高かった。また、白人の小児に比べて、ヒスパニック系の小児、アフリカ系の小児では、同リスクは低かった。

酵素免疫法あるいは直接蛍光抗体法の結果が得られた261例のうち、陽性を示したのは221例で、これらの検査の感度は85%であった。

臨床医に向け「パンデミック(H1N1)2009のウイルスだけでなく、他の呼吸器ウイルスについても、地域における種類や流行時期を把握する必要がある。また、パンデミック(H1N1)2009ウイルスが蔓延する季節では、発熱性呼吸器疾患のため来院する患児に対し、このウイルスの感染を強く疑うこと、特に危険因子のある乳幼児に対しては、迅速抗原検査の結果にかかわらず速急に治療を開始すべきである」と呼びかけている。

他の研究でも、小児におけるパンデミック(H1N1)2009の特徴が検討された。2009年7月12日〜09年12月24日にイスラエルの7施設でパンデミック(H1N1)2009のため入院した小児478例(平均年齢6.1歳)のデータを検討し「最も高頻度に認められた症状は、肺炎、インフルエンザ様疾患、喘鳴の悪化と痙攣であった」と述べている。

今回の研究では42例(8.9%)が小児集中治療室に入室し、3例(0.6%)が死亡した。合併症の誘因となった基礎疾患は233例(48.7%)に認められた。

今回の結果について「イスラエルにおけるパンデミック(H1N1)2009の重症度と死亡率は以前報告されたものより軽度で、季節性インフルエンザで報告された結果と同様であった」と説明した上で、「代謝障害や神経障害などの基礎疾患を有する小児では、同ウイルス感染後に重度の合併症が発現するリスクが高かった。また、チアノーゼ性心疾患の小児と早産児(33週以前)では、同ウイルス感染後に人口呼吸器が必要となるリスクが高いことも示唆された」と付け加えている。

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