自然研究からの治療応用２
「水」は土壌で作られる
良質な水とは、カルシウム、カリウム、マグネシウムなどのミネラルを含み、常在菌が豊富な水です。このような水は「地下水」にしかありません。それは地表から土壌深くにしみわたる際に、土壌の常在菌によって汚染物質が分解され、土壌の豊かなミネラルを含んでいくからです。
有機、慣行農業による大量の硝酸性窒素化合物の投入、生活・工場排水に含まれる界面活性剤、鉱物採掘に伴う重金属汚染などによって汚染有機物が蓄積しています。
これをすべて土壌とくに腐食層といわれる部分が汚染物質をトラップし、時間をかけて土壌の常在菌が分解していきます。ですから、土壌にしみ込んだ水はろ過され、綺麗な地下水となるのです。化学的に汚染物質を分解することは非常に難しく、分解したとしても分解産物がまた危険な物質となって廃棄に困るという悪循環になります。土壌は自然の微生物が勝手に汚染物質を分解してくれますので、これにまさるものはありません。
土壌の微生物は、プラスティックなどの石油製品から砒素、ダイオキシンなどの猛毒まですべて分解して無機物にかえてしまいます。その微生物を育むのは豊かな土壌です。土壌がないと、私たちの生命を成立さえている「水」が汚染されてしまうのです。
私たちの体は土壌と相似形をなしています。
現在地球上では酸性雨が大量に土壌に流れ込んでいますが、土のpHは低下することはありません。土の粒子の中には酸を中和するような塩基性の陽イオン（カルシウム、カリウム、マグネシウム、アルミニウム）があるからです。
また大雨でも、いつの間にか水溜りはなくなっています。また少々日照りが続いても植物が枯れることはありません。それは土壌が排水と保水の絶妙なバランスをとっているからです。
さらに、土の中の微生物もある特定の種が独占しないようにチェック＆バランスによって、病害や病原微生物の増殖を防いでいます。
これらを総称して土壌の「緩衝能」といいます。
実は私たちの体も同じ「緩衝能」を持っています。アルカリや酸性の食品を飲食したからといって、血液や体液がアルカリ性や酸性になることはありません。体内に存在する重炭酸や水素イオンの出し入れ（肺の呼吸と腎臓の分泌）で血液は一定のpH（7．35－7．45）を保っています。
また、皮膚、口腔内～咽頭、気管、肺、腸管、女性生殖器では、常在菌が棲息し、チェック＆バランスによって病原微生物の侵入・増殖を防いでいます。
このように私たちの「からだ」と「土壌」は、「緩衝能」をもつことでカタストロフィー（破綻）から免れているのです。