自然研究からの治療応用
生命体はすべて土壌に生かされています。昨今、貴重な資源として多国籍企業の争奪戦の主役となっている地下水（ミネラルウォーター）も土壌があって初めて生成されます。私たちの健康がいかに土壌にかかっているのかをみていきましょう。土壌を知ることがわたしたちの体や健康を知ることになるのです。当研究所では土壌研究をはじめとした自然観察から私たちの健康を根本的に考えていきます。
身土不二
植物の要素欠乏症か過剰症が、それを食べる動物の健康にも影響を及ぼします。栄養的に健康に育った植物を食べていれば、動物も健康であるとはいえません。動物には必須でも、植物に必須でない元素は、土壌の中のその存在量に応じて植物に吸収されます。そのため、植物はまともに育っていても、動物必須元素のあるものが不足していれば動物は欠乏症を示し、逆に多ければ過剰に摂取する結果となって過剰症で苦しむことになります。
例：1935年中国東北部・黒竜江省～南西のチベット高原東部にかけ原因不明の心筋梗塞多発。→これらの地域の土とその上でつくられたイネ、ムギ、トウモロコシなどの主食となる穀類のセレン含有量が、それ以外の地域と比べて低いセレン欠乏症が原因と判明。
したがって、私たちの体は土壌によって成り立っているといえます。これを古来より「身土不二」（しんどふじ）という言葉で表します。
「水」は生命の要
人間の体の60%は水分です。これが子供であれば80%、高齢者になれば50%と加齢にしたがって、体内の水分量が減ってきます。その水分の70%は細胞の中にあります。細胞内に水のほとんどがあるのですね。
水は何でも溶かしてしまうという性質がありますが、実は細胞内のタンパク質（酵素、ホルモン、神経伝達物質）、遺伝子（DNA,RNA）, 多糖類（ヒアルロン酸などの潤滑剤）は、すべてその外側を水が覆い、保護しています。
水は「熱しにくく、冷めにくい」物質です。外界の温度変化に対して細胞内のンパク質（酵素、ホルモン、神経伝達物質）、遺伝子（DNA,RNA）, 多糖類（ヒアルロン酸などの潤滑剤）などの重要な成分が変性しないように保護しているのです。これは細胞内の水のもっとも重要な働きです。
もちろん細胞外の水も、血液 消化液 分泌液（涙、唾液） 排泄液（汗、尿）となって私たちのからだの新陳代謝の要となっています。サッカーの元日本代表監督であるオシムさんが、「サッカーは団体競技である。水を運べる選手がいないとチームが機能しない。」と話していました。「水を運べる選手」とは、自らは犠牲にしてでもチームに貢献する選手のことです。この「水」こそは、わたしたちの命を養う栄養（血液）、代謝産物である排泄液（尿）を運ぶキープレイヤーなのです。