自然研究からの治療応用３

自然界の土壌の役割

サル、鹿、犬を観察していますと、時々草ばかりでなく土を食べていることに気がつきます。最初は何かのフンを食べているかと思い、犬を叱っていましたが、今はそれが間違いであることに気付き、ワンちゃんに謝っています。

実は人間でも昔は土を食べていたという記録があります。タンザニアの妊婦やベトナムの少数民族では今でも土を食べる土食（geophagy：ジーオファギー）という習慣があります。

チンパンジーの土食ウガンダのキバレ国立公園のチンパンジーたちを観察したところ、チンパンジーが土を食べるのは、マラリア原虫を殺す成分を含むことで知られる植物を食べた直前か直後であったと報告しています（『Naturwissenschaften』誌）。

病原菌を排除するフェノール系の抗生物質は、土壌の微生物が産生するものであることを考えると、このチンパンジーの行動は不思議ではありません。

ベトナムの少数民族地下3～4mから掘り出したという土を網に並べ、うちわで火加減を調節しながら裏表にひっくり返し、香草から出る煙でいぶすように焼いて食べるようです。地下3～4mはいわゆる腐植物質が形成されているところです。

土壌中の塩分やリン酸、銅、鉄分などの微量元素や抗生物質補給の意味があると考えています。