ピースを埋める
日夜進歩するサイエンスでは、「昨日の常識は今日の非常識」となることは稀ではありません。なぜなら、医学を含むサイエンスは、仮説→検証(仮説→ 実験→検証)の過程を繰り返し踏みますが、仮説が真実になることは永遠にないからです(誰も宇宙の始まりや地球の生命の誕生を見たわけでもないので、諸事実から仮説として想定するしかありません)。
しかし、その仮説をスクラップビルド(作っては壊す)することで、真実に対する鋭い観察力や洞察を得ることができます。代替医療にしても生き残れるものがあれば、それは事実に裏打ちされた仮説→検証を幾度も行い、軌道修正していけるものだけでしょう。
すぐれた画家はキャンパスに対象物を描くときに、そのものを先に描くのでなくて、その対象物の周囲、背景を克明に描くことで対象物を鮮明に浮かび上がらせる手法をとります。
当研究所も優れた画家と同じ手法で、個々の病気そのものの機構ばかりを追及するのではなく、その病気に背景、周辺を今までの学問を総動員して克明に解明していくことで、病気そのものを鮮明に浮かびあがらせるというアプローチをとっています。
これは、病気という欠けたピースをただひたすら探すのではなく、その周囲のピースを埋めることでパズルの中の欠けたピースの形が鮮明に浮かび上がってくるような方法です。一見、回りくどく地道に見えるものの中に「真実」はあるものです。
医師は治療者として、そのようなすべての学問を総合・統合して得られた洞察を用いてその時の最善の治療を施すことが天命なのです。
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