幼少期の細菌曝露が自己免疫疾患に有益な可能性
幼少期の細菌曝露が、花粉症から喘息、炎症性腸疾患に至るさまざまな成人期のアレルギー疾患や自己免疫疾患に対する感受性の重要な規定因子であることが先行研究で示唆されており、免疫を獲得するためには幼少期に細菌に曝露させることが有利だとする衛生仮説は広く知られています。
この仮説は、世界各地の都市環境でアレルギー疾患と自己免疫疾患が増加していることを説明付けるもので、幼少期の抗菌薬投与など社会や環境における曝露状況の変化も反映しています。
Brigham and Women’s病院とBWHチャニング研究所との共同研究で、この仮説の生物学的基盤と機序をマウスを用いた実験で検討し、同仮説が妥当であることが論文発表されました（Science 2012; 336: 489-493）
今回、細菌のない環境下で飼育された無菌マウスと、特定の微生物がいないマウス（SPFマウス）の免疫系を比較しました。
その結果、無菌マウスでは喘息や大腸炎に類似する炎症が肺や大腸に生じやすい傾向にあったといいます。いずれにおいても、マウスとヒトでこれらの疾患と関連付けられているインバリアントNKT（iNKT）細胞の集積が原因でした。
興味深いことに、無菌マウスを生後数週間で細菌に曝露させたところ、免疫系が正常化しiNKT細胞の集積が抑制されました。一方、成体期以降の無菌マウスを曝露させても、こうした変化は見られませんでした。
また、仮説通り、出生直後の細菌曝露による保護作用は、長期間にわたり持続することが明らかになりました。やはり、自己免疫疾患の予防のためにも、狩猟採集時代の生活環境が最適であることが分かります。
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