多発性硬化症の発症にウイルスと日光曝露量が関与
少ない日光曝露量と単核球症ウイルスが、多発性硬化症（MS）の発症に多大な影響を及ぼすことが論文報告されました（Neurology 2011; 76: 1410-1414）。
多発性硬化症（MS）は、高緯度の地域に多発する自己免疫疾患です。伝染性単核症（IM）は、エプスタイン・バーウイルス（EBV）により発症します。このウイルスは極めて一般的で、大半の人には症状を引き起こさないヘルペスウイルスの一種です。しかし、10歳代の若者や成人がウイルスに感染すると、伝染性単核症（IM）の発症リスクが高まります。
今回の研究では、英国保健サービス（NHS）所属病院の全入院患者を7年間にわたり検討しています。多発性硬化症（MS）患者は5万6,681例で、うち伝染性単核症（IM）患者は1万4,621例。英国内の紫外線レベルはNASAのデータから収集しています。
その結果、日光曝露と伝染性単核症（IM）の既往をともに考慮に入れると、英国における多発性硬化症（MS）発症率の差が72％説明できました。日光曝露のみでは、この値は61％にとどまりました。春季の日光曝露量低下が多発性硬化症（MS）発症リスクの上昇に最も強く関連していました。
紫外線B波（UVB）への曝露により、体内でビタミンＤが生成されます。日光曝露量が少ないことによりビタミンＤが欠乏すると、エプスタイン・バーウイルス（EBV）による慢性炎症を抑えられない結果、自己の神経髄鞘への異常反応を起こすという機序を強く示唆しています。自己免疫疾患に日光浴が大切なのはこのような理由からなのです。ＳＬＥなどの皮膚症状には紫外線で悪化する場合があるために、積極的な日光浴が勧められないものの、ビタミンＤの重要性は他の自己免疫疾患と変わることがありません。
■本情報・記事の著作権は全て崎谷研究所に帰属します。許可なく複製及び転載などすることを固く禁じます。無断複製、転載及び配信は損害賠償、著作権法の罰則の対象となります。