自己炎症疾患 活性酸素種の過剰産生が関与
細胞内エネルギー工場であるミトコンドリアで産生された活性酸素種（ROS）がまれな先天性疾患である腫瘍壊死因子（TNF）受容体関連周期性発熱症候群（TRAPS）に関与している可能性が示唆された論文報告されました（Journal of Experimental Medicine 2011; 208: 519-533）。
腫瘍壊死因子（TNF）受容体関連周期性発熱症候群（TRAPS）は管理不能な炎症が身体組織を損傷する疾患で、TNFと結合するTNF受容体1型をコードする遺伝子の変異に起因することが1999年にDaniel L. Kastner博士らによって明らかにされています。
数年前に、感染や自己免疫に基づかない炎症を繰り返すことを特徴とする「自己炎症疾患」という疾患概念が提唱されていますが、腫瘍壊死因子（TNF）受容体関連周期性発熱症候群（TRAPS）もその1つです。
腫瘍壊死因子（TNF）、感染症に対して身体が反応する際の主要な炎症性サイトカインの1つで、関節リウマチ（RA）や強直性脊椎炎（AS）などの一般的なリウマチ性疾患にも関与しています。
腫瘍壊死因子（TNF）受容体関連周期性発熱症候群（TRAPS）では、腫瘍壊死因子（TNF）介在性の炎症により反復性の発熱や腹痛、皮疹が起こります。炎症を抑制しなければ、炎症性蛋白質の蓄積であるアミロイドーシスにつながり臓器損傷を招きます。
抗TNF治療が十分奏効しないことから、活性酸素種（ROS）に着目した。活性酸素種（ROS）は化学反応性の高い酸素を含む分子で、がんやアテローム動脈硬化などの病態と関連付けられてきました。また、感染症に対して保護的な働きをすることもかなり前から知られている。さらに、ミトコンドリアの炎症を誘発するシグナル伝達経路に関与している可能性も指摘されています。
今回の研究では、TRAPS患者の細胞と、TRAPSと同一の変異を保有するように遺伝子組み換えを行ったマウスの細胞を用いて、変異細胞がROSを過剰産生することと、これらの細胞における炎症の異常亢進がROSの阻害により有意に抑制されることを突き止めました。
そして、炎症反応を引き起こすROSの発生源はミトコンドリアであることを突き止めました。ミトコンドリアは、主要エネルギー源であるアデノシン三リン酸（ATP）を産生するための一連の生化学反応を通じ、細胞にエネルギーを供給します。この反応では副産物としてROSが産生されますが、TRAPS患者の細胞のミトコンドリアでは過剰なROSが産生されることが分かりました。さらに、これらの細胞のミトコンドリアが産生するROSを阻害することで、炎症を抑えることができたといいます。
抗酸化物質を用いて過剰なROSをある程度抑制することは治療効果があるといえそうですが、抑制しすぎるとミトコンドリア活性化のシグナルがなくなるため逆効果となります。これは自己免疫疾患でも同じことが言えます。詳細は１０月に学研より出版予定の新刊に記載しておりますので、ご参考にされてください。
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