自己免疫疾患の原因３
抗原露出説
「交感神経性眼炎」という病態があります。これは片方の目が外傷などで損傷したときに、もう片方の眼のぶどう膜に炎症が起こるもので、ひとつの自己免疫疾患と考えられています。
なぜ外傷を受けてない側の眼に炎症がおこるのでしょうか？
外傷を受けた眼は、今までバリアーで保護されていた物質（たんぱく質）が、バリアーが破壊されることで露出してしまいます。そこに白血球が血液にのってやってくると異物とみなし、抗体を作るなどして攻撃するようになります。この抗体は自己の組織に対して造る抗体ですので、自己抗体のひとつです。
この自己抗体が反対側の眼の成分も攻撃してしまうため、外傷を受けてない側の眼に慢性炎症がおこるのです。
自己免疫疾患の代表である全身性エリテマトーデス（SLE）も同じ機序で慢性炎症がおこると考えられています。
全身性エリテマトーデス（SLE）では、感染や老化などで分解・処理すべき酵素の一部が機能マヒを起こしています。とくにDNAという細胞の遺伝子を分解する酵素が欠失しているため、自分のDNA（遺伝子）に対する自己抗体ができます。
したがって、損傷した組織や細胞成分で今まで自分の免疫系から保護されていたたんぱく質が何らかの原因によって露出し、白血球に抗原と見なされるようになり、攻撃の対象になってしまうのです。
したがって、自己免疫疾患の治療では組織が露出する原因を断つことと、すでに自己抗体ができて起こっている慢性炎症を止める両方の作業が必要になるのです。
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