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34.笑いは最高の鎮痛薬
上品なくすくす笑いではなく腹式呼吸などの身体活動を伴う笑いでは,体力を消耗することでエンドルフィンが放出され、誰かとコメディーを15分間見るだけで,疼痛閾値が平均で約10%上昇することが論文発表されました(Proceedings of the Royal Society B(2011; オンライン版)。
エンドルフィンは脳内で産生される経ペプチドで,鎮痛作用と多幸感をもたらすと考えられています。今回の研究で,エンドルフィンの大量放出は,腹式呼吸を伴う心からの笑いを誰かと共有したときに限られることが示唆されています。
演奏やダンス,宗教儀式といった共同体活動も幸福感をつくり出すことが分かっているといいます。複数の研究によると,これらも脳内のエンドルフィン放出と関連している可能性が示唆されています。人間が「社会的動物」であることは、医学的に意味もあるのだと感心しました。
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→今回,ヒトの疼痛許容レベルがどのような要因で決定されるのかを検討するため,10年以上に及ぶ6件の試験を実施した。それぞれの試験対象者は,実験室でテレビ番組を視聴するか,劇場などで舞台を観覧し,その前後に疼痛閾値を測定した。この測定は,複数の疼痛誘発操作(氷冷スリーブ,血圧測定カフによる加圧,痛みを伴うきついトレーニング)を用いて行った。
その結果,ゴルフレッスンやドキュメンタリー(いずれも脳を活性化させることを意図した内容のもの)に比べて,『Mr.ビーン』や『フレンズ』などのコメディーを15分間視聴する方が疼痛閾値を有意に上昇させることが分かった。また,視聴者をリラックスした気分にさせる自然番組の視聴では,ゴルフレッスン番組の場合と同様に疼痛閾値に大きな変化は見られなかった。このことから,エンドルフィン放出による鎮痛効果に重要なのは笑い自体であって,心地良さや満足感によるものではないことが示唆された。
別の試験では,エディンバラで開催される芸術祭(エディンバラ・フェスティバル・フリンジ)でコメディーライブを観覧した参加者と,演劇を観劇した参加者で疼痛閾値を比較した。その結果,笑いを他者と共有することで得られる鎮静効果は実験室に限られたものではなく,実際の生活の中でも発揮されることが確認された。