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２９．自閉症:遺伝より環境の影響が大きい
少なくとも1人が自閉症または自閉症スペクトラム障害（ASD）である双生児ペアを対象としたカリフォルニア自閉症双生児研究を実施した結果，遺伝的要因と比べて環境的要因の方が疾患の発症により大きな役割を果たすことが報告されました（Archives of General Psychiatry（2011;オンライン版）。
現在，小児1万人当たり40人が自閉症と推定され，自閉症スペクトラム障害（ASD）の有病率は約1％と高い。自閉症スペクトラム障害（ASD）の発症には遺伝的要因が関与していると考えられており，兄弟姉妹を対象とした複数の先行研究では，一致率（一方が疾患を有していた場合，もう一方にも同疾患がある率）は最大で14％に上ることが明らかになっています。
以前の双生児研究では一卵性双生児における自閉症の一致率は比較的高かったが，二卵性双生児ではそのような傾向は認められませんでした。しかし，これらの研究では使用された診断法が異なるため，自閉症の遺伝率の推定結果には相当なばらつきがありました。
今回，カリフォルニア州発達障害局のデータを解析。対象は，自閉症スペクトラム障害（ASD）と診断された小児が少なくとも1人いる双生児ペアとしました。診断にはAutism Diagnostic Interview-Revised（ADI-R），構造化された親の面接調査，Autism Diagnostic Observation Schedule（ADOS），および言語的・非言語的知的能力を評価する他の検査法を用いた。また，厳格な自閉症とより幅を持たせたASDの2種類の診断基準を設けました。研究開始時に自閉症またはASDの診断基準を満たした小児を「発端者」としました。
最終的に，一卵性双生児54組と二卵性双生児138組（うち80組が男児と女児で構成）が解析された。その結果，自閉症またはASDの一致率は，二卵性双生児と比べて一卵性双生児で高い結果でした。さらに，遺伝的因子がリスクにどの程度寄与するかを推定したところ，自閉症リスクの不一致の2分の1超が，おそらく共有の環境的要因により説明されることが分かりました。その一方で，リスクに対する遺伝的要因の寄与は40％未満であることが示されました。
今回の結果より、自閉症の易罹病性の約55％は双生児に共通する環境的因子により説明されることを示唆しているとしています。共有環境，すなわち双生児間で共通する経験の影響が大きいという知見は，いかに人間は環境によるエピジェネティック変化によって影響を受けるのかを示しています。