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２２．閉じ込め症候群患者の72％に幸福感
意識は清明なものの、動くことも話すこともできない状態を閉じ込め症候群（locked-in syndrome；LIS）といいます。驚くことに閉じ込め症候群患者の72％が幸福感を抱いているとする調査結果が報告されました（BMJ Open 2011; オンライン版）。 閉じ込め症候群は脳幹部の急性血管病変のため、四肢麻痺が起こり、言葉を発することができず、まばたきや眼球の上下動でしか他者との意思疎通ができない状態になります。
今回、フランスの研究者らと共同で、閉じ込め症候群患者168人に対してアンケートを実施。現時点での主観的な幸福度は、Anamnestic Comparative Self Assessment（ACSA）スケールを用いて評価しています。同スケールは過去最も幸せだった思い出（＋5）と最も不幸だった思い出（−5）をそれぞれ最高、最低とした場合、現在の幸福度がどのくらいに相当するかを算出するもの。眼球運動による回答は、家族らの助けを借りました。
168人中91人が応じたが、そのうち26人はすべての質問に回答できなかったため解析対象から除外しています。解析対象となった65人のうち「幸せだ（ACSAスケールで0以上）」と感じている者は72％（47人）、「不幸だ（同0未満）」と感じている者は28％（18人）でした。
対象とした閉じ込め症候群の罹患期間は1年以上で平均8年。64％は自宅生活でパートナーがおり、70％は信仰を持っていました。55％はわずかに話すことができるようになっており、70％は手足の動きが少し回復していたといいます。
不幸だと感じているひとの多くは罹患期間が短く、発語の回復も見られなかったといいます。その一方で、幸せだと感じているひとでも、心停止時の蘇生に関しては、約半数が「望まない」と答えており、不幸だと感じている者で蘇生を望んだのは14％にすぎませんでした。
閉じ込め症候群には眼球の上下動もできず、完全に不動化する例もありますが、眼球の上下動以外の運動機能が残されている場合もあります。また、典型的な閉じ込め症候群でも、集中的なリハビリテーションにより可動性や発語がわずかに回復する例も多くあります。一度状態が安定すれば、10年生存率は80％を超えるといいます。
閉じ込め症候群患者さんの人生は耐え難いもので、生きている価値がほとんどないと考えている人が多いと思います。私も何例か主治医として受け持った経験があります。最初の症例は、指導医の示唆でゆっくり自然死する方向へ持って行きました。たしかに、私なら早く死なせてほしいと思います。
しかし今回の研究から、欧米人では必ずしも内的に絶望しているわけではないことが明らかになりました。これは宗教を持っていることと深い関係があるのでしょうか？きっとこのような状態になったことで、人間が潜在的に持っている悟りのような何かが開花するような気がします。
以下は私の見解です。人間はそれほど他の生物に比べて尊い存在なのでしょうか（これだけ弱いものや他の生物を殺傷し尽くして）？もうこの年になると今の日本のようにむしろ腐敗した側面が人間を退化させていっているように思えてなりません。現時点では、私は他の人に迷惑をかけることになる状態でなれば、早く死なせてほしいと思います。みなさんはどう思われるでしょうか？