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２１．不要な検査や治療を減らす
プライマリケア医に“トップ5リスト”

全米医師連盟（NPA）は，家庭医，一般内科医，小児科医などのプライマリケア医が日常診療で留意すべき診療事項の“トップ5リスト”を公表しました（Archives of Internal Medicine（2011; オンライン版））。

リストに盛り込む内容は，（1）十分なエビデンスで支持される（2）著明な健康上の便益をもたらす（3）リスクや有害作用，コストを減らす―医療行為としています。

リスト作成に当たっては，まず，家庭医学，一般内科，小児科のプライマリケア3領域から招集されたNPA会員から成るワーキンググループでその候補となる検査や治療などの医療行為をまとめました。次に，提案された医療行為に関する文献を照合し，これを支持するエビデンスについて調べました。

同グループがまとめたリストは83人のプライマリケア医が参加した1次調査で検証。その結果を基にリストを改訂し，172人の医師が参加した2次調査でさらに検証されました。両調査とも（1）日常診療における遭遇頻度（2）治療の質への影響（3）治療コストへの影響（4）エビデンスの強さ（5）実施しやすさ―の5項目が評価されました。

以上の過程を経てまとまった各領域のトップ5リストは以下の通り。

  1. 家庭医
    1. 発症6週間以内の腰痛には画像検査を行わない（神経障害や骨髄炎などが疑われる場合などは除く）
    2. 軽度～中等度の副鼻腔炎に抗菌薬のルーチン投与を行わない（症状の発現が7日以上続いたり，軽快した後に再び症状が悪化した場合などは除く）
    3. 無症状の低リスク者に心電図検査などの冠動脈スクリーニングを毎年行う必要はない
    4. 21歳以下の女性または良性疾患のために子宮摘出術を受けた女性には子宮頸部細胞診（PAPテスト）は実施しない
    5. 65歳未満の女性および70歳未満の男性で危険因子がない場合は，二重エネルギーX線吸収法（DEXA）による骨粗鬆症スクリーニングは不要
  2. 一般内科医
    1. 発症6週間以内の腰痛には画像検査を行わない（神経障害や骨髄炎などが疑われる場合などは除く）
    2. 無症状の健康な成人にスクリーニング目的で血液生化学検査，尿検査を行わない
    3. 無症状の低リスク者に心電図検査などの冠動脈スクリーニングを毎年行う必要はない
    4. 脂質異常症の初期治療にはジェネリックのスタチン系薬を使用する
    5. 65歳未満の女性および70歳未満の男性で危険因子がない場合は，DEXAによる骨粗鬆症スクリーニングは不要
  3. 小児科医
    1. 連鎖球菌が陽性でない限り，咽頭炎には抗菌薬を処方しない
    2. 意識障害などの危険因子がない限り，軽症の頭部外傷には画像診断を行わない
    3. 滲出性中耳炎では専門医への紹介は発症早期には行わない
    4. 市販の感冒薬や鎮咳薬を小児に投与しないよう親に助言する
    5. 喘息は吸入ステロイド薬を使用して適切に管理する

ＣＴなどの医療被ばくによる健康障害やコストは馬鹿になりません。不必要な検査・治療項目がこれからも追加されていくでしょう。日本の場合は、皆保険診療であることもあり、患者さんサイドがむしろ検査や薬を要求する場合が多くあるため、このような内容は医師だけでなく広く周知していく必要があるでしょう。

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