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２０．感染症と慢性疾患：二重負担を抱える国が増加
世界保健機関（WHO）がこのほど公表したWorld Health Statistics 2011報告書によると，糖尿病，心疾患，がんを含む慢性疾患の危険因子の保有率が上昇する中，ミレニアム開発目標（MDG）の1つでもある感染症に起因する妊産婦および幼児死亡の低減に苦慮する国はなお多いことが浮き彫りにされました。
現在，世界の全死亡の3分の2を心疾患，脳卒中，がん，糖尿病などの慢性病（非感染性）が占めています。その原因は，グローバル化と都市化に伴う危険因子の広がりや人口の高齢化にあるとされています。とくにグローバル化で問題になるのは、遺伝子組み換え食品、あるいはそれを使用したファーストフードの普及です。
また、生活習慣の悪化が拍車をかけています。最新のWHO統計によると，全世界で男性の10人に4人，女性の11人に1人が喫煙し，成人の8人に1人が肥満です。
これに加え，多くの発展途上国では5歳未満児で死亡リスクが最も高い肺炎，下痢，マラリアなどの健康問題に対処しなければなりません。2009年，新生児（28日未満）死亡は全小児死亡の40％を占めています。
感染症と慢性病はトレードオフの関係にありますが、発展途上国ではその両方による健康被害が重なるといる未曾有の時代に突入しつつあります。
また同報告では，世界的に医療費が増加傾向にある点が強調されています。寿命の延長も期待できるが（平均余命は1990年の64歳から2009年には68歳に上昇），低所得国と高所得国間の医療費の格差は以下のように非常に大きいままであるとしています。
- 国民1人当たりの医療費は，低所得国で推定32ドル（GDPの約5.4％），高所得国で4,590ドル（同約11％）。
- 高所得国では，低所得国と比べて1人当たりの医師数が平均で10倍，1人当たりの看護師・助産師数が12倍，1人当たりの歯科医師数が30倍。
- 熟練医療従事者により行われる分娩の割合は，高所得国ではほぼ100％に達するが，低所得国では40％にすぎない。
World Health Statistics 2011報告書は，WHO加盟193カ国などから報告された100項目超の健康指標に基づく年次報告書です。世界の医療優先度に関するデータと分析のワンストップショップとして新たなウェブサイト“Global Health Observatory”も立ち上げられました。同サイトから，WHOのすべての主要保健・疾患対策プログラムのデータを含む世界で最も大規模かつ最も包括的な保健医療データに容易にアクセスでき，世界の保健医療の状況と動向の分析を収載した50超のデータベースと800の指標を閲覧できます。