自然治療通信

２.「遺伝子研究では病気は治せない」

みなさん、こんにちは。医師の﨑谷です。

今回は、なぜ病気が治らないのかを医学の構造から単刀直入にお話したいと思います。

みなさん、私たち医師の社会で一番評価されるのは何かご存知でしょうか？

病気を治したとか、コミュニケーション能力が高い、あるいは信頼がおける人物というようなことではありません。

それはいくら論文を欧米の雑誌に載せたか、それもレベルの高い雑誌に載せたかが一番の評価なのです（脳外科の世界では福島先生のように腕一本で海外でも評価されているドクターが存在していますが圧倒的に少数派です）。

この医学論文を多産するために、大学病院は存在しているといっても過言ではありません。

結局、狭い領域の問題だけに集中することになります。私も博士論文は、ガンの成長因子の遺伝解析でした。

しかし、こんなものは実際の臨床には全く役に立ちません。病気の全体、人体の全体を見ることなしに、遺伝子というほんの人体の一部だけを取り出して、騒いでいたのが20世紀の医学でした。

これは、人間の姿・形・気質といったものは遺伝子が決定しているのだという極端な還元主義（優生学というおそろしい思想がもとになっています）の悪しき名残です。

「遺伝子の異常」というのをよく聞かれていると思います。

リウマチやＳＬＥなどの膠原病も遺伝子の異常が報告されています。

それでは、遺伝子に異常があれば、必ずリウマチ・膠原病になるのでしょうか？

あるいはガンやアルツハイマーになるのでしょうか？

そんなことはありません。

遺伝子が発現するには、環境などの様々な因子（引き金）がないといけません。

つまり、遺伝子だけを見ていても、全く意味がないのです。実は遺伝子の異常だけで病気になる遺伝病は、全体のごくわずかで、みなさまを悩ます「慢性病」は、遺伝子の病気ではありません。

それよりもみなさまに知っていただきたいことがございます。

現在では「遺伝子」と「環境」に分けることすらナンセンスであることが学問的に証明されているのです。それは、どこまでが遺伝子でどこまでが環境の影響であるということが人間の脳では判断がつかないということです。

現代医療は細かく分析していくのは得意なのですが、遺伝子研究のように「木を見て森を見ず」ということに陥ります。

「遺伝子を見て、人を見ず」ではダメですよね。遺伝子研究も最終的にはさまざまな学問と総合されなければなりません。

ちまたでも残念ながら「遺伝子を修復して病気を治す」というような無茶苦茶なことを流布している団体が後を絶ちません。大変分かりやすい言葉なので一般の方は飛びつきやすいのですね。

人間の体は複雑系で、自動車のパーツのように遺伝子を取り替えて新品にすることなど不可能ですから、このような甘言には騙されないようにしてください。医学は宗教ではありません。

人体は地球環境の一部として切り離すのではなく、トータルとして見たとき、はじめて私たちの「自然治癒」力が作動するのです。