抗生物質アジスロマイシンと心血管死リスク副作用に関連

マクロライド系抗菌薬の一部に、QT延長などの催不整脈、突然死の副作用があることが知られています。今回、そのマクロライド系抗菌薬のアジスロマイシン使用と心血管死リスクについて、抗菌薬非使用の対照群に比べアジスロマイシン使用開始早期の心血管死の相対リスク(HR)は2.88倍と有意に上昇していたことが報告されました(N Engl J Med 2012; 366:1881-1890)。

アモキシシリン、シプロフロキサシンなどの他の抗生物質と比較しても有意な上昇が認められました。心臓血管死の絶対リスクは小さかったが、心臓血管障害の既往のある人に多く見られたようです。抗生物質の副作用で心臓血管死という副作用は一般的に想像しにくいと思いますが、安易な抗生物質投与に警鐘をならすものですね。

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→検討の対象とされたのはテネシー州のメディケイドに加入する30~74歳の人。各種循環器用薬やスタチン、インスリンの使用者、心血管疾患や糖尿病を合併する人が含まれている。心血管疾患以外の重篤疾患を有する人、薬物中毒者、ナーシングホーム入所歴のある人、直近の入院歴のある人などは除外された。

米国でアジスロマイシンの発売が開始された1992〜2006年に発行された処方せんに基づき、同薬群(34万7,795件)を含む5群のpropensity scoreマッチングによる、心血管疾患死リスクの比較が行われた。(1)同薬使用期間と「抗菌薬非使用の期間」をマッチングさせた対照群(139万1,180件)、(2)アモキシシリン群(134万8,672件)、(3)シプロフロキサシン群(26万4,626件)、(4)レボフロキサシン群(19万3,906件)。

アジスロマイシン群の使用開始から5日の抗菌薬非使用群に対する心血管疾患死のHRは2.88(95%CI 1.79~4.63,P<0.001)。全死亡のHRも1.85(同1.25~4.63,P=0.002)と有意に上昇していた。

アモキシシリン群における同期間の有意な死亡リスク上昇は見られなかった。アモキシシリン群に対するアジスロマイシン群の心血管死のHRは2.49(同1.38~4.50,P=0.002)、全死亡のHRは2.02(同1.24~3.30,P=0.005)であった。この数値を心血管リスクスコア別に見ると、第6~9分位では100万件当たり47件の、リスクが最も高い第10分位では100万件当たり245件の心血管疾患による超過死亡が起こるとの試算が示されている。

なお、アジスロマイシン群における心血管疾患死のHRはシプロフロキサシンに比べ有意に高かった(P=0.01)が、全死亡のHRは有意ではなかった(P=0.09)。一方、レボフロキサシン群との比較ではいずれも有意な差はなかった(各P=0.48,P=0.82)。

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