関節リウマチ（RA）患者に対するTNF阻害薬投与は、全部位のがんの発生とは有意な関連性は認められなかったが、メラノーマなどの皮膚がんリスクとは関連していたとの結果が論文報告されました（Annals of the Rheumatic diseases（2011; オンライン版）。
関節リウマチ（RA）患者に対する腫瘍壊死因子（TNF）阻害療法の悪性腫瘍発生リスクについては、現時点では十分なデータは得られていません。
炎症性関節炎、特に関節リウマチ（RA）はリンパ腫や肺がんなどのがんリスク上昇と、大腸がんや乳がんなどではリスク低下との関連が報告されています。しかし、免疫系に作用する生物学的製剤であるTNF阻害薬が、どの程度がんリスクに影響するかについては明らかにされていません。
TNF阻害薬には、キメラ型抗TNFαモノクローナル抗体製剤のインフリキシマブとヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤のアダリムマブ、ヒト型可溶性TNFα受容体とIgGのFc部分の融合蛋白製剤のエタネルセプトがあります。
今回、TNF阻害薬の投与とがんリスクとの関連を検討した報告を臨床研究データベースから抽出し、得られた論文2,039件、学会演題1,979件のうち、厳しい組み入れ基準を満たした論文21件と演題8件についてメタアナリシスおよびシステマチックレビューを実施しました。検討関節リウマチ（RA）患者数は計4万例超でした。すべての研究は1998～2010年に報告されたもので、演題に関しては米国リウマチ学会、欧州リウマチ学会、英国リウマチ病学会で発表されたものに限定ました。
全部位のがん発生率を検討し、被験者が重複していない7研究でメタアナリシスを実施したところ、全部位のがんリスクの上昇はごくわずかか、もしくは全くなかったという結果でした。
TNF阻害薬の長期投与を検討した研究は2件しかなかったが、いずれの研究でも、長期投与によりがんリスクは上昇しなかったといいます。
一方、皮膚がんリスクを検討した4研究のメタアナリシスを実施したところ、非TNF阻害薬群と比べTNF阻害薬群では、メラノーマ以外の皮膚がんリスクが高い結果でした（相対リスク1.45倍）。また、メラノーマの発症を検討した2研究のメタアナリシスでも、TNF阻害薬群でメラノーマの発生リスクが高い結果でした（同1.79倍）。
やはり懸念されていたようにガンの発生が報告されるようになりました。長期的には皮膚ガン以外のガンの発生の可能性もありますので、今後の報告を待ちたいと思います。
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