人口の高齢化が進み,増加する医学的問題の予防と治療のために使用される薬剤数も増えていることから,高齢者における多剤併用はますます日常的な問題になってきている。
英国で行われた研究によると,高齢のがん患者は平均7種類の薬剤を服用しており,また,カナダの研究では新規にがんと診断される高齢者のほぼ全例は,がん治療が始まる前に平均5種類の薬剤を服用していることが明らかになっています。
米国では2030年には診断される全がんの70%を高齢者が占めると予想されているが,多剤併用(polypharmacy)の問題に直面する高齢者の増加や,薬剤の副作用と薬物間相互作用リスクの増大も懸念されています。
カナダの研究では,高齢患者の半数は進行がんであるにもかかわらず,降圧薬や抗凝固薬といった予防的薬剤の副作用を経験していると報告されている。これは日本では日常的に見られている傾向です。ガンでなくとも高齢者の多剤投与は特に開業医レベルで行われています。症状が医薬品の副作用から来ている場合が多く、わたしの場合は、薬を止めることが仕事になっています。
深刻さを増すこの医療問題の認識向上を求め,多剤併用をめぐる問題を防ぐ具体的な解決策をLancet Oncology(2011; オンライン版)に発表されました。薬剤投与中止を標準治療として処方プロセスに組み込むことや,多くのがん患者が治療を受ける外来での多剤投与の管理と抑制に関するガイドラインの作成を提案しています。
数種類の薬剤の併用により,(1)薬剤の副作用や有効性に影響を及ぼす薬物間相互作用の発生率の上昇(2)有害作用や入院リスクの増大(3)医療費の明らかな上昇—を招く。また,最近のシステマチックレビューによると,外来患者の3分の1程度が薬物間相互作用の潜在的リスクにさらされており,ワルファリンと抗てんかん薬の相互作用が最も多いとしている。
この論文では、解決策として
ことを挙げています。
基本的に医薬品の長期投与ありき現状こそを疑わなければなりませんが、まだその段階までいくのには、人類は時間がかかるのでしょう。
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