炎症の治療薬として一般的に使用されている消炎鎮痛薬が不整脈（心房細動（AF）または心房粗動（AFL）のリスク上昇に関連していることが論文発表されました（BMJ（2011; 343: d3450）。心房細動は脳を含めた血管系に高率に塞栓を起こすため、副作用の強い抗凝固剤を服用しなければなりません。
今回検討されたのは、新世代の抗炎症薬である選択的シクロオキシゲナーゼ（COX）-2阻害薬を含む非選択的非ステロイド抗炎症薬（NSAID）。NSAIDでは胃腸障害や腎障害などの副作用が問題となる場合が多く、COX-2阻害薬に関しても心血管疾患や腎障害のリスク増加が報告されています
今回の論文では、デンマーク全国患者登録を用いて、1999～2008年の心房細動または心房粗動の新規診断例3万2,062例を対象に住民ベース症例対照研究を行っています。各症例を、デンマークの一般集団からランダムに抽出し、年齢と性を対応させた10例の対照例と比較しました。患者は、NSAIDを現在服用している患者と最近服用していた患者に分類しました。現在服用している患者については、さらに新規服用患者（心房細動または心房粗動の診断日前60日以内に初めて処方された患者）と長期服用患者に分類しました。
その結果、NSAIDまたはCOX-2阻害薬の服用は心房細動または心房粗動リスク上昇に関連していることが明らかになりました。非服用者に比べて新規服用者で特に強い関連が認められ、非選択的NSAIDの服用により心房細動または心房粗動のリスクは約40％上昇し、COX-2阻害薬の服用により同リスクは約70％上昇しました。
これは、非選択的NSAIDの新規服用により患者1,000例当たり心房細動発症例が年間約4例、COX-2阻害薬の新規服用により約7例増加することに相当しました。このようなリスク上昇は高齢者で最も顕著に認められ、慢性腎臓病や関節リウマチの患者でもCOX-2の新規服用によるリスクが特に高い結果が得られています。
このことから、非選択的非ステロイド抗炎症薬（NSAID）は高血圧または心不全の既往歴のある高齢者や関節リウマチの方には特に慎重に投与すべきです。
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