入院がアルツハイマー病悪化の原因となる可能性

入院によってアルツハイマー病患者の精神機能の低下（mental decline）が加速され、介護施設入所や死亡のリスクが増大することが論文報告されました（Ann Intern Med. 19 June 2012;156(12):848-856）。また、入院中にせん妄（強い錯乱、気分・行動の異常）を経験したアルツハイマー患者（８人に１人）さんは、死亡、認知機能の低下などの悪影響が出現し、退院後に以前の状態に戻る確率が低いことも論文報告されました。

今回の論文では入院自体による精神機能低下のリスク増大は認められないとしていますが、精神機能の低下が加速するという知見は私の臨床経験とも一致しています。入院によってある程度の身の回りのことは医療・介護スタッフがやってくれるので、本人の自助力が低下することも一因になっていると思います。“病院”や“施設”という特殊環境による精神への悪影響も検討する必要があるでしょう。

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→今回の研究は、米マサチューセッツ・アルツハイマー病研究センター（ボストン）で定期的に神経機能の評価を受けていた軽症アルツハイマー病患者771人を対象としたもの。367人が受診から18カ月以内に入院し、194人に入院中のせん妄がみられた。せん妄による入院は4％で、最もよくみられた入院原因は失神、転倒、心疾患、腹痛であった。せん妄のみられた入院患者の41％に入院から1年で急速な精神機能の低下がみられたが、せん妄のみられなかった入院患者では23％、非入院患者では26％であった。入院自体による精神機能低下のリスク増大は認められなかったが、入院中のせん妄により20％のリスク増大がみられた。

入院から1年以内の施設入所および死亡のリスクは、非入院患者に対し、せん妄のあった入院患者ではそれぞれ9.3倍、5.4倍、せん妄のなかった入院患者では6.9倍、4.7倍であった。

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