2007年の認知症コストは1,650億ポンド

認知症は欧州諸国に甚大な影響を与えており，その負担の大部分が無償で介護する人々にかかっていることが指摘されています。

東方拡大を進める以前の2004年時点の欧州連合（EU）加盟国15カ国を対象に，認知症における介護や医療，薬剤などのコストのほか，家族などによる介護で発生する無報酬の労働コストや生産性の損失などを含めたコストを推算したところ，2007年の同コストは計1,650億ポンドに上ったことが論文報告されました（Journal of Alzheimer's Disease 2011; 27: 187-196）。

15カ国全体の認知症患者数（未診断例を含む）は推計で640万人に上り，全人口の1.6％を占めています。

2007年の認知症コストの68％を家族や友人などによる無報酬の介護（インフォーマルケア）のコストが占め，次いで26％を居住型ホームやナーシングホームなどを含むソーシャルケアのコストが占めたといいます。また，各国の医療システムにおけるヘルスケア関連コストは5％，罹病または早期死亡などによる生産性の損失コストは1％と推算されました。

認知症患者1人当たりのヘルスケアおよびソーシャルケアのコストを合算した額は，ルクセンブルクが最も高く，スウェーデン，英国が続きました。対象となった15カ国の平均コストは8,623ポンドでしたが，各国間に大きなばらつきが見られたといいます。

今回の研究では，対象となった15カ国で，約440万人の認知症患者が親族や友人などによるインフォーマルケアを119億時間受けていたものと推定し，そのコストを推算しています。

北欧諸国と南欧諸国との間で異なる特徴が認められたといいます。例えば，英国や北欧諸国では南欧諸国に比べて認知症患者1人当たりのヘルスケアおよびソーシャルケアのコストが高いことが分かった。

また，北欧諸国では南欧諸国に比べて施設介護の割合が高いことも分りました。

いずれにせよ、認知症患者に対する経済的損失、家族の負担などの問題は、国が豊かになっても根本的な問題解決には至っていないことが浮き彫りになっています。やはり、認知症の予防および進行を遅らせる生活習慣改善を最優先に掲げるべきでしょう。

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