アルツハイマー病:筋肉量減少が脳容積・機能低下と関連

アルツハイマー病（AD）の患者さんでは除脂肪体重（体脂肪を除く患者の骨、筋肉および器官の重量）が減少するが、この減少は脳の容積 および機能低下と関係がある可能性があることが報告されました（Archives of Neurology（2010; 67: 428-433））。

以前の研究では、エネルギー代謝と食物摂取の制御にかかわる中枢神経系が破壊されることによって、脳の病的状態が体組成の低下をもたらしていると推測されています。

アルツハイマー病（AD）の患者さんでは意図せぬ体重減少がしばしば見られ、これは記憶障害などの認知症状の発症前に始まることが多いとされています。体重減少は、認知症の重症度とアルツハイマー病（AD）の急速な進行と関係しています。

二重エネルギーX線吸収測定法（DXA）を用いて、初期アルツハイマー病（AD）の患者さん（AD群、70例）と60歳以上で認知症のない対照群（70例）の体組成を比較検討しました。また、脳の評価にはMRIと神経心理学テストを用いました。

その結果、対照群に比べてアルツハイマー病（AD）の患者さん群では除脂肪体重の有意な減少が認められました。年齢と性による調整後、認知機能低下に伴う全脳および白質のみの容積の減少は、除脂肪体重の減少と関連していました。しかし、総体脂肪と体脂肪率には両群間で差は見られず、認知能や脳容積との間にも関連は認められませんでした。

BMI、全体重、肥満度よりも、除脂肪体重のほうが認知症による体組成の変化を反映していることを示しています

筋肉減少症（sarcopenia＝高齢者の加齢による筋肉量の減少）は身体活動の低下によるところが最も大きいものです。アルツハイマー病（AD）では身体活動度が低いため、認知症による行動の変化が除脂肪体重の減少につながった可能性が考えられます。またアルツハイマー病（AD）と筋肉減少症が慢性炎症などの結果として同時に現れる可能性もあります。

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