イチョウ葉エキスは高齢者の認知機能低下に効果なし

脳循環の改善効果があり，認知機能を改善するとされているイチョウ葉エキス。しかし、2008年にはイチョウ葉エキス（EGb761）が認知症の発症を抑制しないとする研究結果が報告されていました（JAMA 2008; 300: 2253-2262）。同研究に参加した米ピッツバーグ大学のBeth E. Snitz氏らは今回，同じ被験者を対象に実施した新たな研究でイチョウ葉エキス（EGb761）が加齢による認知機能低下にも効果がないことを突き止め、JAMA（2009; 302: 2663-2670）に発表しました。

医薬品グレードのイチョウ葉エキス（EGb761）は厚生労働省も推奨していますが、Paul R. Solomonら（JAMA 2002; 288: 835-840）やHiroko Dodgeら（Neurology 2008; 70: 1809-1817）による先行研究の結論でも認知機能低下に効果がないことが示されています。

脳の血液循環の改善がアルツハイマー病をはじめとする認知症進行の予防にはならないということですね。認知症の慢性炎症という病態を考えれば、血流改善が全く的外れであることが分かりますね。

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→研究は，米国の6医療センターの男女3,069例〔72?96歳，軽度認知障害（MCI）482例〕を対象に実施された。対象者をイチョウ葉エキス（EGb761）120mg/1日2回投与群1,545例、プラセボ投与群1,524例にランダム割り付けし、中央値で6.1年間追跡。前回の報告で は，認知症の発症率はイチョウ葉エキス群で3.3例/100人・年、対照群で2.9例/100人・年で、ハザード比（HR）は全認知症で1.12（95％ 信頼区間0.94?1.33，P＝0.21）、アルツハイマー病で1.16（同0.97?1.39，P＝0.11）と有意な差が認められず、研究開始時点 でMCI対象者に限定しても認知症進行率への影響は認められなかった（HR 1.13，95％信頼区間0.85?1.50，P＝0.39）。

今回の研究では，Modified Mini-Mental State Examination（3MSE）の変化率，Alzheimer Disease Assessment Scaleの認知に関する尺度（ADAS-Cog），記憶力，注意力，視覚空間構成能力，言語能力，実行機能のZスコアで6か月ごとに評価し，イチョウ葉エキスが加齢による認知機能に及ぼす効果を検討した。

その結果，Zスコアの低下率は記憶力（イチョウ葉エキス群0.043 vs. 対照群0.041，P＝0.79），注意力（同0.043 vs. 0.048，P＝0.37），視覚空間構成能力（同0.107 vs. 0.118，P＝0.08），言語能力（同0.045 vs. 0.041，P=0.33），実行機能（同0.092 vs. 0.089，P＝0.49）のいずれも両群間で有意差が認められなかった。3MSEとADAS-Cogの変化率はベースライン時におけるMCIの有無で異 なったが，両群間の比較ではMCIの有無にかかわらず有意差は認められなかった（3MSE：P=0.71，ADAS-Cog：P=0.97）。

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