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運動で寿命が延長する可能性

運動不足が解消された場合,平均寿命が世界で0.68年,日本では0.91年延びることが論文報告されました(Lancet(2012; 389: 219-229)

今回,運動不足が冠動脈疾患(CHD),2型糖尿病,乳がん,結腸がんの発症に及ぼす影響を評価するため,運動不足の状態について,そうでない状態と比較した相対リスクを計算し,その値を基に運動不足に関連する人口寄与率(population attributable fraction;PAF)を算出しました。

運動不足は「週150分の中等度運動(例:30分の早足歩行を週5日)を行っていないこと」と定義しています。ほとんどの人は運動不足に定義されるのではないでしょうか?早朝に散歩している日本人もほとんど年金暮らしの高齢者で、学生や働き盛りの人たちは深刻な運動不足に陥っていると思います。

今回の検討の結果,運動不足は全世界のCHD症例の5.8%(範囲は東南アジアの3.2%から東地中海地域の7.8%)と関連しており,同様に,2型糖尿病症例の7.2%(範囲3.9〜9.6%),乳がんの10.1%(同5.6〜14.1%),結腸がんの10.4%(同5.7〜13.8%)と関連していることが分かりました。

運動不足の解消による効果が最も大きいのは結腸がんで,最も小さいのはCHDでした。しかし,実際の死亡数では,結腸がんよりもCHDの方が多いことから,運動不足を解消することで回避できる死亡はCHDの方が多いことになります。

今回の研究では,運動不足の解消により,2008年の全世界の死亡数5,700万人のうち530万人が回避可能と推計されました。しかし,運動不足が完全に解消される可能性は低いため運動不足が一定程度解消された場合に回避できる死亡数を推算。その結果,運動不足が10%解消されると世界で年間53万3,000人,25%では130万人の死亡が回避できる可能性が示されました。

さらに,運動不足が解消された場合,世界の平均寿命は約0.68歳延びると指摘。日本では0.91年延びるとしています。

運動不足の影響は喫煙,肥満とほぼ同等で、ほとんどの人が実行可能な毎日15〜30分の早歩き程度の身体活動により,公衆衛生上大きな便益がもたらされるとしています。慢性的運動不足の日本人にも耳が痛い話ですね。



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