ラパマイシンが早老症に有効
免疫抑制薬のラパマイシンは、カロリー制限をしたときに活性化される遺伝子をオンにする働きがあることが知られています。これは以前の研究でラパマイシンを投与されたマウスは,非投与マウスと比べて長寿であることが確認されています。
今回、早老の遺伝子疾患であるハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(HGPS)の患児から採取された細胞を用いて行われた実験で、臓器移植時の拒絶反応抑制に用いられる免疫抑制薬のラパマイシンには,加齢に伴うヒト細胞DNAの損傷を抑制する効果もある可能性があることが論文報告されました(Science Translational Medicine(2011; 3: 89ra58)。
まれな遺伝子疾患であるハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(HGPS)は小児期に急速な老化を招き,患児は平均13歳で死亡します。こうした早老症の小児では,関節硬直,股関節脱臼,心血管疾患など通常は高齢者に見られる老化疾患がしばしば認められます。
英語で早老症に当たるprogeriaは,ギリシャ語で「高齢」を意味するgerasに由来します。20世紀初頭に初めて確認されてから,これまで百数例しか報告されていない極めてまれな疾患で,原因は蛋白質ラミンAをコードする遺伝子の変異であることが分かっています。
この遺伝子変異は,異常なラミンA(プロジェリン)を産生し,これが細胞に蓄積すると細胞機能に重大な障害をもたらす。正常ヒト細胞もごく少量のプロジェリンを発現し,加齢とともに蓄積していくことが複数の研究で示されています。
HGPS細胞をラパマイシンで処理したところ,処理細胞では非処理細胞と比べてプロジェリンの蓄積量が減少し,細胞増殖の鈍化,細胞寿命の短縮,細胞膜損傷などの異常が逆行することを確認されました。これらの結果に基づきHGPS患児に対するラパマイシンの効果を検討する臨床試験を計画中としています。
問題は臓器移植時の拒絶反応抑制に用いられる免疫抑制薬を使用するという点です。二次的な感染、長期的なガンの発生は必須ですから、この副作用をどうコントロールしていくかが問われるでしょう。夢のアンチエイジング薬などないのです。
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