余命に歩行速度が関連
最近の研究で、高齢者の健康状態の指標として歩行速度が有用である可能性が示唆されています。高齢者における歩行速度と生存期間との関連について検討するため、1986〜2000年にデータが収集された9件のコホート研究のプール解析を行われ、その結果が論文発表されました(JAMA(2011; 305: 50-58))。
解析対象としたのは、65歳以上の高齢者3万4,485人。平均年齢は73.5歳で、女性が59.6%、白人が79.8%。今回の研究で、ベースライン時における歩行速度と平均12年間(6〜21年間)の追跡データを解析した。歩行速度は1秒当たりの進行距離(メートル)としました。歩行速度の測定は、解析対象となったすべての研究で、ほぼ同一のプロトコルに準じて行われていました。各研究で測定された歩行距離には約2.4mから6mまで幅があったため、調整して解析しました。参加者の平均歩行速度は0.92m/秒でした。
追跡期間中に1万7,528人が死亡し、全体の5年生存率は84.8%、10年生存率は59.7%でした。
解析の結果、すべての研究で歩行速度は生存率と有意な関連が示され、特に75歳以上で強い関連が認められました。歩行速度が0.1m/秒速くなるごとに死亡リスクは12%低下しました(P<0.001)。75歳時の歩行速度の分布による予測10年生存率の幅は、男性で19〜87%、女性では35〜91%でした。
男女ともすべての年齢層において、歩行速度が速いほど予測される生存期間が延長しました。期待余命の絶対年数は、年齢が低くなるほど長い結果でした。年齢、性、歩行速度に基づく生存期間予測の精度は、年齢、性、歩行補助具の使用、身体機能に基づく予測や年齢、性、慢性疾患、喫煙歴、血圧、BMI、入院歴による予測と同等でした。
歩行速度が生存期間の予測因子となりうる理由について、「歩行はエネルギーや運動制御、身体の支えを必要とするだけでなく、心臓や肺、循環器系、神経系など複数の臓器の活動を要する。歩行速度の低下は、臓器障害や歩行のエネルギー効率の低下を反映していると考えられる」と考察しています
アンチエイジングには歩行を含めた有酸素運動が必須です。高齢者については歩行そのものが困難になりますので、ひとつの指標にはなるでしょう。しかし、臨床的に健康が歩行速度を上げることによって得られるわけではありませんので、解釈には注意が必要です。
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