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老化によるサルコペニアに潜在性慢性炎症が関与

加齢による骨格筋量・筋力の著しい低下をサルコペニアといいます。加齢によって暴露されるインターロイキン(IL)-6をはじめとする炎症性物質の関与がサルコペニアを引き起こすと報告されています。

第17回日本未病システム学会でサルコペニアを筋量・筋力の両面からとらえ、潜在性慢性炎症が地域在住中高年者のサルコペニア発症に及ぼす影響を縦断的に検討した結果が報告されました。

対象は「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」参加者。NILS-LSAでは1997〜2000年に40〜79歳を対象として第1次調査を行って以降、2年ごとに追跡調査を実施しています。今回の研究では、第1次調査の参加者(2,267人)のうち第2〜5次調査に少なくとも1回は参加した1,916人の中から、まず、第1次調査時点で顕在性炎症が認められた者、サルコペニアと評価された者を除外。当初、サルコペニアを生じていなかった群で追跡調査期間中にサルコペニアが起こる確率をCox比例ハザードモデルを用いて性別に検討されました。

潜在性炎症の指標としては白血球数、シアル酸、高感度C反応性蛋白(hs-CRP)の3つを用い、どの指標が潜在性炎症の指標としてサルコペニアに関係するかを検討。サルコペニアについても四肢筋量指標(ASM-I)、右膝伸展筋力(KES)、脚伸展パワー(LEP:瞬発力を表す)を指標として3通りに定義し、筋肉のどの側面に潜在性炎症が影響を与えるかを検討されました。

その結果、ASM-Iを指標とする四肢筋量サルコペニア、KESを指標とする下肢筋力サルコペニアについては男女とも有意差はなかったが、LEPを指標とする下肢筋パワーサルコペニアに関しては、男性では白血球数増加、女性ではhs-CRP高値が発症に有意にかかわっており、これらの検査所見から潜在性慢性炎症ありと判定された群ではその後8年間のサルコペニア発症頻度は約1.5倍であったといいます。

以上から潜在性慢性炎症が加齢に伴う筋肉の質的機能、特に瞬発力に影響を与える可能性が示唆されています。アンチエイジングには慢性炎症を止める方法が肝要であることが示唆された報告でした。

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