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ダイエットで脂肪を減らしたければ十分な睡眠を

摂取カロリーを減らしてメタボ解消を狙う減量挑戦者は、睡眠時間を十分に確保しないと、体重は減っても脂肪は減らないという悲しい結果に終わる可能性があることが報告されました(Ann Intern Med誌2010年10月5日号)。

過体重または肥満の成人10人を対象にクロスオーバー試験を行い、摂取カロリーを同様に減らしても、睡眠時間8.5時間のグループに比べ、5.5時間に制限したグループでは脂肪の減りが悪く、空腹感も強いことを明らかになりました。

過去に行われたボランティアを対象とした研究で、摂取カロリーを抑えられた状態で睡眠時間が制限されると、空腹感が強まり、食欲増進ホルモンのグレリンの血中濃度が上昇、食欲を抑えるホルモンであるレプチンの濃度は低下すること、一方、消費エネルギーと摂取エネルギーのバランス(エネルギーバランス)が正、つまり摂取エネルギーが消費エネルギーを上回る状態では、これらホルモンレベルに変化は見られないことが報告されていていました。

グレリンは空腹感を引き起こし、体脂肪の利用を抑制して脂肪組織の増大を招く作用を持ちます。

十分に睡眠をとらないと摂取カロリーを減らしても脂肪は減らず、メタボリスクは低下しない可能性が示されました。

これは睡眠不足によるストレスがホルモンバランスに影響していると考えます。効率良いダイエットを行いたいなら、睡眠時間の確保がまず前提ということですね。

実験の詳細はコチラ

→ダイエット中に睡眠時間を制限した場合に体内に起こる変化を明らかにすべく、無作為化クロスオーバー試験を実施した。

14日間摂取カロリーを減らし、睡眠時間を8.5時間または5.5時間に限定した場合の体重減少と、脂肪量の減少、その間の空腹感の強さ、そして、血中のレプチンとグレリン、コルチゾール、エピネフリン、ノルエピネフリン、甲状腺ホルモン、成長ホルモンなどの濃度を測定した。

大学の臨床研究センターと睡眠研究室で、35〜49歳でBMIが25〜32、非喫煙者で自己申告による睡眠時間が1日に6.5〜8.5時間の人々を12人登録。

3カ月以上の間隔を空けて、すべての患者が睡眠時間5.5時間の14日間と8.5時間の14日間を経験した(間隔の平均は7カ月)。

各試験期間は、中等度のカロリー制限を実施。摂取カロリーの合計を安静時のエネルギー代謝率の90%に制限し、朝食時(8時から9時まで)に25%、昼食時(12時半から13時半)に30%、夕食時(18時半から19時半)に35%、夜食(21時)に10%摂取するよう指示した。サプリメントとしてマルチビタミンとマルチミネラルを提供した。

夜の睡眠時間は簡易型睡眠ポリグラフィ装置を使って毎晩記録することにより確認。昼寝は禁止した。

試験期間中は二重標識水法を用いて消費カロリーを推定した。また、呼吸商を算出、食物商と体組成の変化から推定される体内水分量の変化も推定した。

体脂肪量は二重X線吸収法により測定。空腹感は、患者自身が22時半にVASスケールを用いて毎日評価した。

主要評価指標は、脂肪の量の減少と除脂肪体重とし、2次評価指標は、エネルギー基質(糖質や脂質)の利用の変化、エネルギー消費、空腹感、メタボリックホルモン(代謝に影響を与えるホルモン:インスリン、グルカゴン、グルココルチコイド、甲状腺ホルモンなど)レベルの変化などに設定。

クロスオーバー試験を完了したのは10人(男性が7人)。これらの患者の平均年齢は41歳、BMIの平均は27.4、ベースラインの睡眠時間は平均7.7時間だった。

試験期間中の摂取エネルギーは、8.5時間群が1447kcal/日、5.5時間群が1450kcal/日だった。二重標識水法による消費エネルギーはそれぞれ2136kcal/日と2139kcal/日。14日間の試験終了時の体重減少はそれぞれ2.9kgと3.0kgで差はなかった(P=0.24)。

睡眠時間短縮は脂肪の減少を抑制していた。8.5時間睡眠群は1.4kg減少、5.5kg群は0.6kg減少(P=0.043)。除脂肪体重の減少は1.5kgと2.4kg(P=0.002)で、5.5時間群で大きかった。体重減少に占める脂肪量の割合は56%と25%(P=0.004)だった。

朝食から4時間後までの呼吸商を比較した。5.5時間群の呼吸商は8.5時間群より有意に大きかった。これは、5.5時間睡眠では脂肪の燃焼が少ないことを意味する。

ベースラインと比べた空腹感は、8.5時間群が-0.1、5.5時間群が+0.7(P=0.043)だった。

5.5時間群でグレリン濃度は高く(P=0.04)、エピネフリン濃度は低く(P=0.005)、安静時エネルギー代謝率も低かった(P=0.01)。

レプチン、ノルエピネフリン、成長ホルモン、コルチゾール、甲状腺刺激ホルモンの濃度には有意な差は見られなかった。

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