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抗肥満薬rimonabantの市販後臨床試験の結果報告

重篤な精神神経系の副作用により早期中止となった抗肥満薬rimonabantの心血管病変の改善効果を検討した市販後臨床試験(CRESCENDO試験)の結果が報告されました(Lancet誌2010年8月14日号)。

rimonabantは内在性カンナビノイド受容体を遮断することで減量効果を発揮し、トリグリセリド、HDLコレステロール、空腹時血糖などの代謝異常を改善することが示され、ヨーロッパでは抗肥満薬として市販されていていました。悪心やうつ病などの副作用が懸念されていましたが、長期投与による心血管病変リスクの改善効果に期待が集まっていました。

今回の解析では肥満を改善することによって得られると想定された心血管系の病気も改善しないことが示されました。肥満の夢の薬は、残念ながら副作用が強く、かつ有益でないことが確認されたということです。やはり、生活習慣を改善しないで楽をして体質を改善することは不可能なのではないでしょうか?

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→CRESCENDO試験の研究グループは、rimonabantによる重篤な血管イベントなしの生存率の改善効果を検討する二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施しました。

2005年12月〜2008年7月までに、42ヵ国974施設から血管疾患の既往歴やリスクの増大がみられる患者1万8,695例が登録され、rimonabant 20mgを投与する群(9,381例)あるいはプラセボ群(9,314例)に無作為に割り付けられました。

主要評価項目は、中央判定委員会の評価による心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイントとし、intention-to-treat解析を行いました。

平均フォローアップ期間13.8ヵ月の時点で、3ヵ国の医療関連規制当局がrimonabant群における自殺への懸念を表明したため、これらの国では試験が早期に中止されました。試験終了時(2008年11月6日)における心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイントの発現率は、rimonabant群が3.9% (364/9,381例)、プラセボ群は4.0%(375/9,314例)であり、両群間に有意な差はみられませんでした(ハザード比:0.97、95%信頼 区間:0.84〜1.12、p=0.68)。

rimonabant群はプラセボ群に比べ、消化管副作用[33%(3,038/9,381 例) vs. 22%(2,084/9,314例)]、精神神経系副作用[32%(3,028/9,381例) vs. 21%(1,989/9,314例)]、重篤な精神的副作用[2.5%(232/9,381例) vs. 1.3%(120/9,314例)]が有意に高頻度でした。rimonabant群の4例、プラセボ群の1例が自殺しました。

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