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カロリー制限で健康寿命が延長

すべての動物はカロリー制限の恩恵を受け、加齢に関連する共通の分子経路が影響を受けることがScience(2010: 328: 321-326)に発表されました。

酵母や齧歯類からヒトに至るすべての生物は、カロリー制限の恩恵を受ける。単純な生物では、カロリー制限により2倍あるいは3倍もの寿命延長が可能です。しかし、先進諸国では肥満が流行病の域に達しているため、健康寿命と平均寿命との30歳の差は縮まらず、むしろ拡大傾向にあります。

今回の研究は、120歳や130歳まで寿命を延ばすことに焦点を合わせたものではなく、健康寿命(元気で過ごせる寿命)と寿命の大きなギャップを埋めるためにカロリー制限が有効かどうかを検討しています。

カロリー摂取量を10〜50%減らすことで、インスリン様成長因子(IGF)-1、グルコース、ラパマイシン標的分子 (target of rapamycin;TOR)の関与する経路の活性が低下し、寿命がかなり延長すると報告しています。また、これらの経路に関連する遺伝子の変異によっても同様の効果が得られ、変異を有する動物では、がんや心血管疾患、認知障害など加齢に関連する疾患が発症しにくいと報告されています。

カロリー制限を行った動物の約30%は、概して加齢に関連する疾患を伴うことなく高齢で死亡しました。その一方で、標準の食餌を与えた動物の多く(94%)は、がんや心疾患などの慢性疾患を発症して死亡しました。カロリー制限を行った動物または加齢関連経路の遺伝子変異を有する動物の30〜50%では、健康寿命と寿命が等しくなったようです。

カロリー制限を実践している人では、テストステロン値低下による性欲減退などの副作用があります。また、代謝速度と深部体温が低下して体温調節機能が変化するため、かぜをひきやすくなるようです。これは炎症性サイトカインの減少によるものです。これらの副作用を考慮しても、慢性病に罹る確率が下がるので、カロリー制限で健康寿命は長くなると考えてよいでしょう。カロリー制限では脳の無駄な活動も抑えられるため、本人の気持ちも安らかになってよいかも知れません。

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