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“洋なし形”体形に疾患保護作用

大腿部や臀部の脂肪は心疾患や糖尿病のリスク低下に関連することが報告されました(International Journal of Obesity(2010; オンライン版)。今回の研究により、“洋なし形”体形(皮下脂肪型)は“りんご形”体形(内臓脂肪型)より健康によいだけでなく、糖尿病や心疾患に対して保護的に働くことが示されました。

身体はエネルギーを脂肪酸の形で脂肪組織に蓄え、激しい運動後や絶食中などの必要なときに放出します(脂肪は糖やタンパク質よりもカロリーが高い)。腹部の脂肪も大腿部の脂肪もこの役割を同じように担いますが、腰周りの脂肪が1日の間の必要度に応じて脂肪酸の貯蔵と放出を活発に行う一方、大腿部の脂肪はより長期の貯蔵に使われます。

腰周りや腹部の脂肪が増える と、体内を浮遊する脂肪酸の量が増し、肝臓や筋肉などの器官に沈着して害を及ぼします。これは糖尿病、インスリン抵抗性、心疾患などと関連することが知られています。一方、大腿部の脂肪は脂肪酸を長期にわたって閉じ込め、沈着させず、害を引き起こさないと推測されています。

今回の研究で腰周りに脂肪が蓄積した“りんご形”体形と大腿部や臀部に脂肪が蓄積した“洋なし形”体形の健康への影響が調べられました。

その結果、大腿部の脂肪が多く臀囲が大きいほうが健康増進につながること、また、下半身の脂肪それ自体が身体に保護的に作用することがわかりました。

また、腹部の脂肪と大腿部の脂肪が分泌するホルモンのレベルが異なるかどうかについても調べられました。腰周りの脂肪は 炎症性サイトカインという分子を放出することが知られており、慢性炎症は糖尿病や心疾患につながるプロセスの1つです。

男性では脂肪が腰周りに付きがち(腹が出る)で、女性では大腿部と臀部に付きがちです。同じ体重の40歳前後の男女を見た場合、両者で体脂肪の分布は異なり、男性のほうが糖尿病と心疾患リスクが高いことが分かっています。一方、女性では閉経 後、ホルモンの変化に伴って体形が変わるようになるが、体脂肪分布が男性に近付くに従い、糖尿病と心疾患リスクが男性と同等になります。

実際、糖尿病治療薬には内臓脂肪を皮下脂肪へと再配分するものがあり、それにより糖尿病の症状が改善することがわかっています。

中年太りが慢性炎症を引き起こすという点ではあらゆる病気にかかり易くなるひとつの要因といってよいでしょう。しかし、中年男性や閉経前後の女性は体重が増えるのは主に内臓脂肪で皮下脂肪にならないのが通常です。医薬品でこれを変えられるのであれば、プロポーションまで変えられるという一石二鳥ですので、大ヒットは間違いないでしょう

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