新薬の早期承認は安全性に疑問
最近、日本でも米国などの新薬を早く承認するように患者団体などが求める行動が起きています。関節リウマチ、膠原病、潰瘍性大腸炎、クローン病などの自己免疫疾患に対する生物学的製剤やガンに対する抗ガン剤などは、毎年医学界でも新薬が取りざたされます。
米国では以前の研究で、審査期限前の2か月間に承認された薬剤は、その後、安全性の理由から販売中止となり、警告文を表示することになる傾向があることがわかっています。
しかし、製薬会社の公的規制機関(日本で言えば、厚生労働省)への圧力は強いものがあります。日本でも大手製薬メーカーには厚生労働省の役人が公然と天下りしていますが、欧米では製薬会社と公的機関の癒着はもっと露骨です。
規制当局の財源が製薬会社に依存しているからです。当局は製薬会社から審査費用を徴収し、それを審査迅速化のための人件費に充当することが多いようです。製薬会社からの資金が財源に占める割合は、欧州医薬品審査庁(ロンドン)で75%、米食品医薬品局(FDA)で43%、英国医薬品庁(MHRA)で は100%ですから、医薬品がこのよう幅を利かすのも無理はありません。
このような状況下で、コロラド大学保健科学センター(米コロラド州デンバー)のDavid Kao博士らは「薬剤の規制当局による新薬承認までの審査期間がかつてないほどに短縮されてきており、患者の安全性が犠牲にされる懸念が生じている」と論文発表(BMJ、2008; 337: a2591)で警鐘を鳴らしました。
同博士は「未知の危険を最小限にとどめるような薬剤監視システムは、医師、規制当局、製薬会社、患者を含めた医療において重要な立場にある者全員が参加して初めて確立できる」と結論づけています。
現在はインターネットの普及で、新薬承認後90分以内に薬剤の販売が開始できるようです。このように短期間に多くの人々が新薬を入手できる事実は、多数の患者が未知の危険にさらされる可能性をはらんでいるといえます。
特に医薬品の長期の副作用は、ある程度の時間の経過が必要ですので、患者サイドもそのことをなおざりにして、新薬に飛びつく傾向があります。これには製薬会社の巧みな心理操作がありますが、私たち消費者も同じ過ちを繰り返さないように慎重になるべきでしょう。慢性病が医薬品などを服用するだけで簡単に治るはずがないのは、歴史的にも証明されていますし、慢性病の根本を考えると医薬品に治癒できる力などないことは理解できるはずです。
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