扁平苔癬の丘疹-口腔粘膜、爪、頭皮などに多彩な病像

扁平苔癬は、慢性、炎症性の皮膚・粘膜疾患です。人口の約0.5％に見られ、性差はなく中年者に好発します。 自己免疫反応が背景にあると考えており、抗原としては金や水銀などの金属、さまざまな化学物質、薬剤、ウイルス（B型肝炎ウイルス、2型単純ヘルペスウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、HIVなど）、細菌（スピロヘータ、Helicobacter pyloriなど）の可能性が示唆されています。

典型的な原発疹は多角形の境界鮮明な紫色の丘疹で、強い掻痒を伴い、丘疹の中央が陥没していることもあります。膝、肘、手首の屈側、下腿の伸側、仙骨部に好発するが、腋窩、鼠径部、乳房の下部に生じる場合もあります。 丘疹は融合することがあり、融合局面では、扁平苔癬に特徴的な網状に配列した白色の線条（Wickham線条）が認められます。

症例の約20〜30％で口腔粘膜も侵されます。多くは無疼痛性で、網状や丘疹またはプラーク状の病変ですが、まれに強い疼痛を伴う萎縮性、びらん性、または水疱性の病変が生じます。

最も重要な組織学的特徴は、表皮と表皮下の結合組織との境界部の炎症（表皮下の帯状リンパ球湿潤）、それによる基底細胞の破壊と角質増殖です。

治療には、ステロイド薬またはカルシニューリン阻害薬の外用剤を使用します。また、発疹性の皮膚病変やびらん性の粘膜病変に対しては、ショック療法としてステロイド薬を全身投与します。

重症例と爪の病変がある患者にはレチノイドが有効で、難治性の皮膚病変には、追加でソラレン長波紫外線（PUVA）療法と中波長紫外線（UVB）療法を施行します。また、皮膚や粘膜症状が重症化している場合は、免疫抑制薬や体外循環光化学療法を行うことが推奨されています。

治癒するまでに平均1〜2年かかり、治癒から数年が経過した後でも再発することもあります。急性全身性の方が慢性限局性よりも早く、しかも自然に治癒するという。肥厚性扁平苔癬や口腔内粘膜のびらん性病変など慢性で持続する病型は悪性化し、有棘細胞がんになることもがあり、注意が必要です。

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