片頭痛リスク：家族内にてんかん患者2人以上で2.5倍
片頭痛患者は一般人口に比べててんかん発症率が高く，また，てんかん患者における片頭痛発症率は非てんかん患者の2倍近くであることなど，てんかんと片頭痛の併発は既によく知られています（Epilepsia 2005; 46: 1955-1962，Neurology 1994; 44: 2105-2110）。
今回、家族に別のてんかん患者がいるてんかん患者を対象に片頭痛の既往を調べ，遺伝的影響について検討しました。その結果，親，同胞，子の一等親血縁者に2人以上のてんかん患者がいる場合は，全くいない場合に比べ前兆を伴う片頭痛発症リスクが2.5倍に上ることが分かりました（Epilepsia 2013年1月7日オンライン版）。
この結果は、私の著書でも述べているとおり、てんかんも片頭痛も慢性炎症が原因であることの傍証となります。
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→対象は，米国，カナダ，オーストラリアなどの27施設において国際コンソーシアムとしててんかんを研究するEpilepsy Phenome/ Genome Project（EPGP）に登録のてんかん患者。12歳以上で，全般てんかんまたは非後天性焦点性てんかんと診断され，同胞または親子にてんかん患者がいることなどを条件とし，501家族から730人（男性285人，女性445人）を抽出。自閉性障害や広汎性発達障害などが認められる患者は除外した。
片頭痛については，EPGPを支援する米国立神経疾患・脳卒中研究所（NINDS）が推奨する面接法を通して，国際頭痛分類第2版2004（ICHD-Ⅱ）により前兆を伴う片頭痛（MA）か前兆を伴わない片頭痛（MO）かを鑑別した。なお，同面接法は12歳以上を対象としているため，同氏らの研究対象も12歳以上に制限した。
730人中184人で前兆を伴わない片頭痛（MO）または前兆を伴う片頭痛（MA）のいずれかの片頭痛が認められた。男女別および年齢層別の発症率を検討したところ，男性（140人，14.5％）より女性（44人，31.5％）で，12～24歳の青少年層（56人，16.5％）より25～39歳の若年成人層（66人，34.9％）および40歳以上の中高年層（62人，30.8％）でそれぞれ高率であった。
EPGP登録のてんかん患者本人に対する家族内のてんかん患者（同胞または親）の片頭痛発症率を比較した。その結果，てんかん患者本人（probands）は371人中87人（23.5％），同胞は231人中52人（22.5％），親は128人中45人（35.2％）で，本人に対する片頭痛発症の補正後オッズ比（OR）を求めたところ，同胞は0.9（95%CI 0.62～1.35），親は1.2（同0.70～1.95）で，いずれも有意差は認められなかった。
続いて，EPGP未登録のFDRにおけるてんかん患者の人数別にも片頭痛の発症の補正後ORを求めた。その結果，FDRのてんかん患者0人に対する補正後のORは，1人が1.0（95％CI 0.59～1.58），2人以上が2.0（同0.99～3.85）と，いずれも有意差は確認されなかったが，2人以上では片頭痛の発症が2倍に上ることが分かった。
さらに，片頭痛の種類別にも検討したところ，補正後ORは前兆を伴わない片頭痛（MO）ではFDR 1人が0.9（95％CI 0.49～1.63），FDR 2人以上が1.1（同0.50～2.38）といずれも有意差は示されなかったが，前兆を伴う片頭痛（MA）ではFDR 1人が1.1（同0.55～2.09），FDR 2人以上が2.5（同1.13～5.46）と2人以上において2.5倍有意に上昇することが分かった。
大規模なてんかん患者コホートを対象に，コホート外の近親者におけるてんかん患者数も考慮して解析した今回の研究により，親，同胞，子といったFDRに2人以上のてんかん患者がいる場合，てんかん患者本人の前兆を伴う片頭痛（MA）発症リスクは2.5倍に上ることが判明した。
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