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スイスコホート研究―30年の長期追跡研究で明らかになった頭痛持ちの実態

タイプ別にみた頭痛症候群と長期転帰との関連について調べるため、一般住民を長期追跡した結果、各頭痛タイプが重複して発生していることが明らかになりました(BMJ. 2011 Aug 25;343:d5076. doi: 10.1136/bmj.d5076.)。

研究は、スイス・チューリッヒ州の住民で、1978年に男性19歳(徴兵義務で登録)、女性20歳(選挙名簿に登録)であった4,547例を対象としました。

対象を30年間追跡し、その間に行われた7回のインタビューに回答した591例について、頭痛の有病率、頭痛タイプ別割合の時間的変遷、発症年齢、重症度、影響、家族歴、医療サービスの利用、薬の服用について評価が行われました。

結果、各頭痛タイプの年間平均有病率は、前兆のある片頭痛が0.9%[女/男比:2.8(女1.4%、男0.5%)]、前兆のない偏頭痛が10.9%[2.2(15.1%、6.8%)]、緊張型頭痛が11.5%[1.2(12.5%、10.4%)]でした。

各頭痛タイプの30年間の累積有病率は、前兆のある片頭痛3.0%、前兆のない片頭痛36.0%、緊張型頭痛29.3%でした。

しかし前兆のない片頭痛の有病率は高率にもかかわらず、大半の人が一過性で、追跡期間の半分以上の期間中、片頭痛を有していたのは約20%に過ぎませんでした。

被験者27〜28歳時までに行われた3回のインタビューで、片頭痛を有した人がその後に片頭痛単独もしくは他の頭痛タイプとの複合を再発していた割合は69%でした。同じく緊張型頭痛を有した人での同再発は58%でした。なお、それぞれ単独再発の割合はいずれも12%でした。

また、片頭痛を有した人のうち、その後は片頭痛を伴わずに緊張型頭痛を発症した人の割合は約19%でした。緊張型頭痛を有した人で、その後は緊張型頭痛を伴わずに片頭痛を発症した人の割合は約22%でした。

これらの各頭痛タイプの重複がかなりあることや非特異的な進行パターンにより、優勢的な頭痛タイプの安定性はきわめて低い結果でした。

一方、臨床関連の重症度(苦痛の強さ、仕事への障害など)および医療サービスの使用(受診、治療、処方など)については、傾向があることが認められた。いずれも指数が最も高かったのは前兆のある片頭痛で、以下、前兆のない片頭痛、緊張型頭痛、非分類頭痛の順でした。

以上より頭痛の分類そのものが治療に結びつくことはなく、共通した頭痛の病態に対する多面的なアプローチが必要になります。


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