重度の頭痛が白質病変と関連

重度の頭痛の既往歴と脳の白質病変の体積が関連していたことが論文発表されました（BMJ 2011; 342: c7357）。この研究では，全タイプの頭痛の中で脳梗塞と関連するのは前兆のある片頭痛のみであること，また，脳病変の有無にかかわらずいずれのタイプの頭痛も認知機能障害とは関連しないことも示されました。

頭痛は一般的に高頻度に見られる症状で，特に多いのは激痛を伴う慢性的な片頭痛です。成人の約12％，小児の5〜10％が片頭痛を経験していると推定されています。片頭痛には前兆を伴うものと伴わないものの2種類があります。前兆を伴わない片頭痛の方がはるかに多く，伴うものは片頭痛全体の15％程度です。前兆としては頭痛発生の数分前に閃輝暗点などの視覚的症状を経験することが多いといわれています。

片頭痛あるいはその前兆の機序に関しては解明が進んでいませんが，一過性の血管収縮による脳内血流の減少が，前兆の出現に寄与しているのではないかと考えられています。前兆のある片頭痛患者では脳梗塞リスクが高いことが複数の研究で示されていますが，今回の研究結果はこうしたリスクが存在するのは片頭痛患者のごく一部であることを示しています。

MRIを用いた近年の研究で，片頭痛患者では片頭痛のない者に比べて無症候性の梗塞性病変を含むさまざまな脳病変や白質病変を有する割合が高いことが示されていました。一方，白質病変は認知機能の低下やアルツハイマー病（AD）リスクの増加，うつ病，運動障害，脳卒中リスクの増加などと関連することが示されていました。

今回の研究では，片頭痛を含む頭痛が白質病変の体積や脳梗塞，認知機能と関連するか否かについて検討されています。

対象はフランス西部の都市ナントの一般住民を10年間追跡したEVA研究の登録者のうち，神経内科医による頭痛の評価データが得られた780例としました。平均年齢は69歳，58.5％が女性でした。MRIにより大脳白質病変の体積を評価し，梗塞の分類を行ったほか，認知機能はMini Mental State Examination（MMSE）を含む各種検査で評価しました。

その結果，20.9％（163例）が重度の頭痛を経験したことがあると報告。そのうち70％超（116例）が片頭痛を経験しており，その一部（17例）は前兆を伴うものでした。

白質病変の総体積を3分位に分けて検討したところ，重度の頭痛の既往歴がある者では，既往歴がなく白質病変の総体積が最低3分位の者に比べて最高3分位の白質病変を有するオッズ比（OR）が2.0でした。同様の傾向は白質病変が深部白質（OR 2.0）か脳室周囲（同1.9）かにかかわらず認められました。

また，頭痛のタイプと脳病変との関連について検討したところ，前兆のある片頭痛のみが深部白質病変の総体積（OR 12.4）および脳梗塞（同3.4）と関連していました。

認知機能のスコアは重度頭痛の既往歴がある群とない群，脳病変がある群とない群のいずれにおいても同等で，脳病変の有無にかかわらず片頭痛を含む頭痛と認知機能との関連は示されませんでした。

今回の結果から、脳病変により認知機能低下リスクが増大することはなく，片頭痛が脳に有害な影響を及ぼすことはないと考えられます。

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