前兆を伴う片頭痛に単一パルス経頭蓋磁気刺激が有効

磁気刺激を後頭部に伝える新たな携帯型装置が、前兆を伴う片頭痛に非侵襲的な非薬物療法として有望であるとの研究結果が発表されました（Lancet Neurology（2010; 9: 373-380））。前兆が現れた際にこの装置を使用することにより、最長で治療後48時間、前兆のある片頭痛を効果的に緩和し、重篤な副作用は認められなかったといいます。

単一パルス経頭蓋磁気刺激（sTMS）が、片頭痛の前兆を引き起こす脳内電気活動に影響を与える可能性はエビデンスで示されており、これまでにも 小規模研究により、sTMSが片頭痛の症状を緩和することが示されていました。

しかし、医療施設外での使用に適さない大型で高価な装置を用いたり、片頭痛患者さんを盲検化（統計上の偏りをなくす）していないため実際に治療効果を確認するのが困難でした。

今回、家庭での使用に適した新たな携帯型sTMS装置を用いて、前兆のある片頭痛に対する安全性と有効性を検討するランダム化偽刺激対照試験を実施されました。

試験では、201例を偽刺激群（99例）とsTMS群（102例）にランダム化して、前兆が現れたときに電気刺激を加えるよう指示し、治療前と治療後2、24、48時間の頭痛と随伴症状を記録しました。3か月間の試験期間における使用回数は最高3回までに制限しています。

装置を1回以上使用した164例を対象とした解析の結果、sTMS群では偽刺激群と比べ前兆のある片頭痛に対する有意な治療効果が認められました。治療後2時間時に頭痛を経験しなかった患者は、偽刺激群の22％に対しsTMS群では39％で、改善率は17％でした。また、治療後24時間と48時間の時点でも、偽刺激群と比べsTMS群では頭痛の発現率が低い結果が得られたとのことです。頭痛発現後の鎮痛薬使用率は両群で同等でした。

さらに、sTMS群で片頭痛に随伴する悪心、羞明、音声恐怖症といった症状の増悪は認められず、これらの症状の改善に関して偽刺激群と変わらないことが確認されました。

sTMS治療への忍容性は高く、装置関連の重篤な有害事象は報告されず、副作用の重症度と発現率は両群とも同等の低さでした。さらに、装置の使用におけるミスはほとんどなく、使いやすさの評価は10点満点で平均8点でした。

この結果は、私にとっては時代の変化を感じます。もはや医薬品の時代は過ぎ去り、まったく新しい治療法がこれからも出現してくると思います。今回の磁気刺激装置の副作用はほとんどなかったことは注目に値するでしょう。

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