本文へジャンプ

メトホルミン使用の卵巣がん患者さんで5年生存率良好

2型糖尿病患者を対象にメトホルミンとがん発症・がん死亡との関連を検討したランダム化比較試験(RCT)を含む16件の論文についてシステマチックレビューおよびメタ解析を行ったところ,メトホルミン非投与患者と比べてがん発症・死亡の両リスクはいずれも3割超の低下が確認されています(PLoS ONE2012年3月20日オンライン版)。

今回、米メイヨー・クリニック医科大学で治療を受けた卵巣がん患者さんを対象とした症例対照研究を実施し,メトホルミン使用者は,糖尿病がないメトホルミン非使用者と比べ,5年生存率が有意に優れていたことが論文報告されました(Cancer 3 DEC 2012オンライン版)。メトホルミン使用は多変量解析後も,卵巣がんの独立した生存予測因子で,生存のハザード比(HR)は2.7を示しました(メトホルミン使用卵巣がん患者さんの方が生存率が高い)。

詳細はコチラ

→今回、メイヨー・クリニックを継続して受診中の入院・あるいは外来の卵巣がん患者さんの1995〜2010年のデータを調べ,糖尿病がありメトホルミンを服用していた卵巣がん患者さん1人に対し,年齢(±5歳),国際産科婦人科連合(FIGO)のステージ分類と残存病変が一致し,糖尿病がなくメトホルミン非服用の卵巣がん患者さん2人を対照として比較した。

メトホルミンは使用1年以上を対象とした。使用期間の中央値は2.3年(1〜11年)で,卵巣がん診断時あるいは,診断後に500〜1,000mgを1日2回使用していた。

解析対象はメトホルミン群72例,対照群143例。両群間で,年齢,診断年,optimal cytoreduction(手術による可能な限りの腫瘍摘出,残存病変1cm以下),プラチナ製剤による化学療法は類似していたが(P>0.05),BMIはメトホルミン群の方が高かった(33±7対29±7)。メトホルミン群は対照群と比べ,FIGOステージが早期で,組織学的分化度(グレード)が低く,非漿液性腫瘍が多かった。

解析の結果,メトホルミン群と対照群の疾患特異的5年生存率は73%対44%(P=0.0002)で,メトホルミン群の方が優れていた。がんがより早期で,悪性度が低かったことが複合的に影響していると考えられたが,ステージ,グレード,組織型,化学療法,BMI,optimal cytoreductionを交絡因子として多変量解析後も,メトホルミンは卵巣がんの独立した生存予測因子であり,メトホルミン使用による生存のHRは2.7(95%CI 1.4〜5.4,P=0.004)だった。BMIは卵巣がんの予後に影響しないと考えられており,BMIを調整後もメトホルミンと生存率の関連に変化はなかった。

さらには,このうち上皮性卵巣がんのみに限り,メトホルミン使用者1人につき条件が一致した非使用者3人を対照とし,同様の分析を行った(メトホルミン群61例,対照群178例)。その結果,両群間で年齢,ステージ,グレード,optimal cytoreduction,組織型,プラチナ製剤による化学療法は同様だったが(P>0.05),疾患特異的5年生存率は67%対47%(P=0.007)と,メトホルミン群の方が有意に優れていた。多変量解析後もメトホルミンは卵巣がんの独立した生存予測因子であり,生存のHRは2.2(95%CI 1.2〜3.8,P=0.007)だった。

メトホルミン以外の糖尿病治療薬使用者では生存率低い

残像病変がある場合や,ステージが進行している場合(V,W),漿液性腫瘍においても,生存率はメトホルミン群で良好だった。

さらに,メトホルミンと生存率の関連が糖尿病によるものでないかどうかを調べるため,インスリンを含むメトホルミン以外の糖尿病治療薬を使用していた患者(糖尿病対照群)と比較を行った。その結果,糖尿病対照群の疾患特異的5年生存率は40%で,メトホルミン群や対照群と比べて最も低かった(P=0.003)。


■本情報・記事の著作権は全て崎谷研究所に帰属します。許可なく複製及び転載などすることを固く禁じます。無断複製、転載及び配信は損害賠償、著作権法の罰則の対象となります。

ページトップへ