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更年期障害エストロゲン単独HRTで閉経後の喘息リスク増加

メキシコ国立公衆衛生研究所(メキシコ・クエルナバカ)は、約5万8,000人の閉経女性を検討した結果、エストロゲン単独のホルモン補充療法(HRT)により喘息発症リスクが50%増加することが明らかになったと報告しました(Thorax(2010; 65: 292-297)。研究によると、喫煙経験が全くない、あるいはアレルギー疾患の既往がある女性では、同療法により喘息リスクはそれぞれ 80%、86%も増加しました。

最近、複数の疫学研究から更年期障害に対するホルモン療法(HRT)による喘息リスクの増加が指摘されていました。女性ホルモンが喘息発症に関与している可能性があるため、今回の研究がおこなわれました。

更年期障害に対するエストロゲン単独治療によって炎症性サイトカインの放出によって喘息が引き起こされている可能性を示唆していて興味深いです。

臨床研究の詳細はコチラ

→1925~50年生まれのフランス人女性約10万人を追跡するFrench E3Nコホート研究の参加者のうち、登録時に喘息の既往がなく、HRT施行の有無が明らかな閉経女性5万7,664例を解析対象とした。自然閉経女性の 9.4%と、外科的閉経女性の28%がエストロゲン単独HRTを受けていた。

French E3Nは、欧州におけるがんと栄養の関係を検討した前向き研究(EPIC)の一環として行われた研究で、対象者には、1990年から2002年までの間に 2年に1回、HRTと喘息の発症に関する調査が行われた。追跡期間は累積49万5,448人・年であった。

追跡期間中の喘息新規発症数は569例(1,000人当たり1年で1.15例)で、HRT施行者では、HRT未経験者と比べて他の喘息の危険因子 を調整しても、喘息の発症リスクは21%上昇していた。

喘息発症の有意なリスク上昇は、エストロゲン単独HRT施行でのみ認められ、同療法を受けた女性ではHRT未経験女性と比べて、喘息発症リスクが 54%上昇していた。

喘息発症リスクは、エストロゲン単独HRT施行者のなかでも、特に喫煙経験のない女性(HRT未経験女性と比べて喘息発症リスクが80%増加)と 喘息診断前にアレルギー疾患の既往がある女性(同リスクが86%増加)で顕著に高まった。

エストロゲン+プロゲステロン併用HRTを受けた女性では、非喫煙者、アレルギー疾患既往者のいずれでもリスクの上昇はわずかであった。

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