更年期障害に新ガイドライン

更年期におけるホルモン補充療法（HRT）の有用性とリスクについて、ドイツで新しいガイドラインが発表されました（Frauenarzt（2009; 50: 840-851））。

更年期の睡眠障害、性欲の変化あるいは気分の変動といった症状は個人差が大きい。QOL全般あるいは健康関連QOLの改善のみを目的としたホルモン補充療法（HRT）の適用は認められていませんが、同療法は腟粘膜の乾燥、骨代謝の改善、尿路感染に有効とされています。

女性ホルモンには外陰腟萎縮症を予防または改善させる効果があり、この場合、局所療法も全身療法と同様に効果的という結果です。また、再発性尿路感染であれば腟用エストロゲンでかなりの効果を見込むことができるとされています。

ホルモン補充療法（HRT）は骨粗鬆症にも有効で、骨折リスクの有意な低下につながっています。ただし、冠動脈性心疾患（CHD）の予防には適さないようです。

その一方で、エストロゲン療法を実施した場合の静脈血栓リスクと肺塞栓リスクに関しては反論の余地がなく、特に危険因子を有している患者や治療1年目ではリスクが高いので禁忌といってよいでしょう。

さらに同療法では、脳虚血発作や胆嚢・胆管疾患（胆石症、胆嚢炎/胆管炎）のリスクも上昇するため、ホルモン補充療法（HRT）の検討に際してはリスク/便益を慎重に検証する必要があります。さらに、がんとの関係にも注意すべきです。

同療法が失禁や認知症に及ぼす影響に関して、一貫したデータはありません。今回の評価では、経口ホルモン補充療法（HRT）が尿失禁に対して好ましくない影響を及ぼすことが 示され、経皮的局所塗布剤についても期待に反して効果を示すエビデンスは得られなかったといいます。また、認知症リスクの低減効果について指摘した観察試験も存在しますが、これに関しても確証は得られず、逆に65歳以上女性では、ホルモン併用療法（エストロゲン＋酢酸メドロキシプロゲステロン）によって認知障害リスクは上昇していたということです。

さらに、植物性エストロゲンや非ホルモン製剤の効果も立証できておらず、これらをホルモン補充療法（HRT）の代替療法として推奨することはできないようです。

〈ホルモン補充療法（HRT）とがんの関係〉

（1）乳がん
5年以上にわたりホルモン補充療法（HRT）を継続した場合、乳がんリスクは上昇する。エストロゲンをゲスターゲンと併用した場合の発がんリスクは、エストロゲンを単剤 投与した場合より高い。しかし、治療を終了すると、同リスクは持続的に低下し、数年後にはHRTの経験のない女性と同等のレベルに達する。また、乳がん治 療後のHRTは、再発リスク上昇を招くため禁忌である

（2）子宮内膜がん
エストロゲン単剤療法の場合、治療期間と用量に応じて、子宮内膜がんリスクは増大する。その一方で、1か月当たり10日間以上、ゲスターゲンを併用する治療法は安全とされている

（3）卵巣がん
ホルモン補充療法（HRT）実施で卵巣がんリスクは上昇する。しかし、単剤投与と併用療法で差があるかどうかについてはまだ不明である

（4）結腸がん
ホルモン併用療法では、結腸がんと直腸がんのリスクは有意に低下するが、エストロゲン単剤投与時の効果は立証されていない

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